米国の一地方都市で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

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wherein 節の是非について(2)

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前回、MPEP2111.04で問題にされている“wherein”節の解釈が、プロセス(方法)クレームに“wherein”節を使用する場合に限った話である点を指摘した。この点について、もう少し詳しい説明をさせていただく。

MPEP2111.04には、wherein節について、以下のような説明がされている。

「例えばGriffin v. Bertina 事件 (Fed. Cir. 2002)
という事件において、裁判所は、『wherein節は、(クレーム中において)それが操作手順を意味し、目的として記載されている場合、方法クレーム(の発明)を特定する要素とみなされる』と判示している (“wherein” clause limited a process claim where the clause gave “meaning and purpose to the manipulative steps”)。」

Griffin v. Bertina事件では、方法クレームの保護範囲を特定する(クレーム発明を解釈する)上で、wherein節の内容を考慮するか否かが問題になった。

問題となったクレームは、以下の通りである。

A method for diagnosing an increased risk for thrombosis or a genetic defect causing thrombosis comprising the steps of:

(A) obtaining, from a test subject, test nucleic acid comprising codon 506 within EXON 10 of the human Factor V gene;  and

(B)  assaying for the presence of a point mutation in the nucleotides of codon 506 within EXON 10 of the human Factor V gene, wherein said point mutation correlates to a decrease in the degree of inactivation of human Factor V and/or human Factor Va by activated protein C, wherein the presence of said point mutation in said test nucleic acid indicates an increased risk for thrombosis or a genetic defect causing thrombosis.

(和訳)

血栓症又は血栓症を引き起こす遺伝子異常のリスクを診断する方法であって、

(A) 試験対象から、人的要因V遺伝子のエクソン 10のコドン506を含む試験体核酸を採取する工程と、

(B) 前記人的要因V遺伝子のエクソン 10のコドン506を含む試験体核酸中における点突然変異の存在を分析する工程とを含み、

上記工程(B)において前記試験体核酸中における点突然変異の存在は血栓症又は血栓症を引き起こす遺伝子異常のリスクを示すものとする(この部分がwherein節)
方法。

本事件において、特許権者は、クレームを広く解釈させる為に、wherein節の内容は、単に工程(B)の結果を示しているに過ぎず、クレームの範囲を解釈する際、その解釈にこれを含めるべきではないと主張した。

つまり、必ずしも、「点突然変異が存在するという結果をもって血栓症又は血栓症を引き起こす遺伝子異常のリスクを判断する」方法でなくても、(A) 試験対象から人的要因V遺伝子のエクソン 10のコドン506を含む試験体核酸を採取する工程と、(B) 同試験体核酸中における点突然変異の存在を分析する工程と含む試験方法なら、全て当該特許発明の保護範囲に含まれると主張したわけだ。

普通に考えて相当に図々しい主張に思えるし、実際、裁判所は、当該方法クレームにおいては、wherein節の内容も解釈に含めるように限定して、クレーム発明を解釈すべきであると判断している。つまり、「点突然変異が存在するという結果をもって血栓症又は血栓症を引き起こす遺伝子異常のリスクを判断する」事は当該クレーム発明に必須の構成要件であると判断したわけだ。

ある意味、当たり前の事のように思えるが、本事件における特許権者の主張には、それなりの根拠がある。

思うに、特に米国においては、方法の発明というのは、工程、言い換えると手順の組み合わせからなる発明という捉え方をするのが大原則であるため、手順という要素の性格に合わないものは、発明の保護範囲から除外すべきではないか、という考えはある意味自然な事と言える。

その一方、例えば装置の発明の場合、それは複数の構造の組み合わせからなる発明であると捉えられるため、各構造の特徴もまた、発明の保護範囲を特定する上で当然その解釈に含められるという考え方が原則になる。

以上より、MPEP2111.04が言及しているwherein節の解釈の不安定さ?というのは、もっぱら方法クレームに関する事であると考えて差し支えないと思うのだ。

ただし、装置クレームや物のクレームにおいても、方法クレームとは別の観点から、クレームの解釈を曖昧にしてしまう非常に好ましくないwherein節の使い方がある。

(次回に続く)

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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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