米国の一地方都市で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

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wherein 節の是非について(1)

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去る9月27日、大阪の十三で開催したセミナーでは、参加者の皆様におきましては、熱心に耳を傾けていただき、また、質疑応答時にも、多くのご意見やご質問をいただきました。私自身、大変勉強になりました。心から感謝致します。

さて、今回は、上記セミナーで説明した話の中で、私自身、その重要性と難しさを再認識した論点を一つ紹介させていただきたいと思う。私の個人的な意見としての色がかなり濃い話になるので予めご了承を。

MPEP2111.04には、以下のような説明がされている。

クレームの範囲は、クレームにおいて、実行される事が任意であり必須ではない工程を示すために用いられる言語、又は、クレームを特定の構造に限定するためのものではない語句によって限定されることはない。以下の語句は、クレームの構成要素を特定する上で問題となる場合がある。

(A)“adapted to” 又は “adapted for”を含む節
(B)“wherein”を含む節
(C)“whereby”を含む節

上記の節がクレームにおいて発明を限定し得るか否かは、事案によって異なる。(判例)“wherein”を含む節は、プロセス(方法)のクレームにおいて、複数の工程についての意義と目的を示すものと認められる(判例)

方法クレームにおいて、“whereby”を含む節が、特許性に影響を及ぼす条件について言及している場合、それは物質を変化させる条件として考慮に入れるべきである。(判例)

 一方、方法クレームにおいて、“whereby”を含む節が、単に、クレームに記載された工程によって生じるであろう結果を記述している場合、それは(発明の構成要素として)考慮の対象にならない。(判例)

原文はこちら

先ず、MPEPが問題にしているのは、クレームの範囲を解釈する上で問題を生じ得る3タイプの表現(A)~(C)なのだが、そのうち(A)“adapted to” 又は “adapted for”を含む節については、例えば、「~の目的に採用(適用)される部材」とか、「~装置に採用(適用)される部材」と言った場合、「~に」の部分をクレームにおける構成要素と捉えるべきか否かが曖昧で、議論になる可能性があるという事になる。

例えば、「フリーズドライに適用される真空ポンプ」と言った場合、フリーズドライに適用されるという事自体はクレームの構成要素なのかという問題が生じる可能性がある。また、「自動車に採用されるランプ」と言った場合、果たして自動車はクレームの構成要素なのか、という問題がある。そもそも、「採用される」とか「適用される」という文言は、(使用)予定のニュアンスを含む傾向が強い。そのため、文脈にもよるが、単に“adapted to” 又は “adapted for”と言った場合、採用される対象が現時点でクレームの構成要素と結びついているのか否か(現時点で自動車に組み込まれた状態のランプの事を言っているのか、自動車に組み込むのが好ましいと言っているだけなのか)がわかり難いという話になるのだ。

次に、(C)“whereby”を含む節について、ここで言わんとすることは比較的明確である。

例えば、方法クレームに含まれる一つの工程として、”heating a substance A, whereby the substance A is aggregated.” (物質Aを熱して、当該物質Aを凝固させる工程)と言った場合、”whereby the substance A is aggregated.” (当該物質Aを凝固させる)という文言をクレームの構成要素と考えるべきか否かという問題が生じ得る。ちょっとでも熱を加えれば当然のように物質Aに凝固するのか、それとも、当該物質Aを凝固させる為に必要な熱の加え方(一定時間以上とか、一定の温度以上とか)があって、この文節では、その条件をクレームの範囲に含ませようとしているのか、それが必ずしも明確でない、という事である。恐らく、その答えは、クレーム全体の文脈や明細書における説明次第、という事になるのではないか思う。

そして、今回問題にしたいのが(B)“wherein”を含む節である。

個人的には、“wherein”と言うのは、これによって表現される文節に、相当多くのバリエーションが存在すると思う。少々大げさかもしれないが、クレームにおける既述の構成要素の構造、性質、機能、他の構成要素との関連等、好きな事を何でも表現することが可能、といっても良いのではないだろうか。ただし、それだけ便利な文言である一方、使い方が不味いと、クレームの解釈に疑義が生じる原因にもなり得る。

また、MPEP2111.04で問題にされているのは、“wherein”節の使い方について、もう少し狭い範囲の話、すなわち、プロセス(方法)クレームに“wherein”節を使用する場合に限った話であるように思う。

MPEP2111.04では、“wherein”を含む節の解釈が、“adapted to (for)”や“whereby”を含む節と同様、事案によって異なりちょっとやっかいであるかのようにも受け取れる説明がされているが、本当のところ、少しニュアンスが違うと思う。少なくとも、“wherein”を含む節がクレームにおいてあまり好ましくないと考えるのは、少々早合点だ。

(次回に続く)

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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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