米国の一地方都市で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

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閑話 -定例ミーティング-

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企業の知財/法務部であれ、特許/法律事務所であれ、多くの職場では、業務連絡のためのミーティングが何らかの形で定期的に行なわれているものと思う。小職の勤務する事務所では、技術分野や担当顧客によって編成されたグループ毎に日程を設定し、定期的なミーティングを行う。この定例ミーティングでは、弁護士、パテントエージェント、特許技術者等、各実務担当者から業務の進捗報告があったり、業務分担の調整が行われる他、リーダー格のパートナー弁護士から業務全般に関する指導や助言もあったりするわけである。

ある日のこと、この定例ミーティングで、グループのリーダ格であるパートナー弁護士から、拒絶理由通知(“Office Action”)に対する意見書での議論の仕方について、実務担当者に対する以下のような意見、というか、ちょっとしたお小言があった。

「君たちの書く意見書の中で、新規性(米国特許法102条)や非自明性(同法103条)違反の拒絶理由に対する議論として、『審査官の提示する先行技術文献に開示されて要素aと、クレーム発明の構成要素Aとは均等(“equivalent”)ではなく、当該クレーム発明の構成要素Aは、どの先行技術文献に開示も示唆もされていない。従って、当該クレーム発明は新規性及び非自明性を有するので、特許許可を求む。』といった表現をよく見かけるのだが、こういう表現は、私はあまり好きではないね。均等(“equivalent”)という言葉は、一般に、特許侵害の有無を判断する際、均等論(“doctrine of equivalents”)を論ずる場合に用いられる法律用語でしょ。確かに、『引用文献の開示技術を単独で、或いは他の引用文献の開示技術と組み合わせても、クレーム発明の構成の一部を欠くから、当該クレーム発明は特許性を否定されない。』という議論は正しいのだけれど、発明の新規性や非自明性を論ずる際に、軽々しく均等(“equivalent”)という言葉を使う事に違和感を覚えるよ。もっと別の表現ができるでしょ。例えば、『クレーム発明の各構成要素について、引用文献には開示(“disclosure”)も示唆(“suggestion”)もない。その根拠は、。。。』等といった表現で議論を進める方が適切だよ。」

これに対し、何名かの若手弁護士が以下のような意見を述べた。

「おっしゃる事もわかりますが、実際のところ、審査官の方が、例えば、『文献1に開示された要素(a)はクレーム発明の構成要素(A)と均等(“equivalent”)であり、文献2に開示された要素(b)はクレーム発明の構成要素(B)と均等(“equivalent”)であると考えられる。...それ故、構成要素(A)及び(B)からなるクレーム発明について、全ての構成要素は文献1又は文献2に開示されている為、クレーム発明は文献1及び文献2の組合せから自明であり、特許性はない。』という表現で、拒絶理由の根拠を説明する場合が多々あるのです。そのような場合、審査官に対する我々の反論としては、『審査官は引用文献の開示要素(a)をクレーム発明の構成要素(A)と均等(“equivalent”)であると主張するが、要素(a)と要素(A)は均等(“equivalent”)ではない。なぜなら、...』と(オウム返しに)議論を進めるのが論理的に正しいのではないかと思うのですが。。。」

ところで、この若手弁護士たちの言い分は一理あるし、実は、審査官が(新規性や非自明性を否定する)拒絶理由を上記のような論理立てによって拒絶理由を説明することが多いのにも、それなりの根拠がある。

例えばMPEP(審査便覧)2183には、もっぱらミーンズ・プラス・ファンクション(“means-plus-function”)又はステップ・プラス・ファンクション(“step-plus-function”)形式の構成要素を含むクレームの特許性(新規性・非自明性)に関する規定ではあるものの、判例を根拠に、概ね以下のような趣旨の説明がなされている。

先行技術文献に開示された要素とクレームにおいてミーンズ・プラス・ファンクション(“means-plus-function”)又はステップ・プラス・ファンクション(“step-plus-function”)形式で記載された特定の構成要素を比べた場合、先行技術に含まれる要素が、(A)クレームにおいて特定されている機能を遂行し、(B)明細書中において、発明の構成要素から特に除外されるように説明されているわけでもなく、(C)クレームに記載されたミーンズ・プラス・ファンクション(“means-plus-function”)又はステップ・プラス・ファンクション(“step-plus-function”)形式の構成要素と均等(“equivalent”)である事について、審査官が合理的な説明を与えれば、当該クレームの構成要素が先行技術文献に記載されていると言える為の一応の根拠が示された事になる。

つまり、クレーム発明の新規性や非自明性を判断するに際し、クレームに記載された特定の構成要素と先行技術文献に含まれる開示要素とが均等(“equivalent”)であるか否かを問題にする事が、審査便覧(MPEP)においても審査手順として推奨されているわけだ。また、同MPEPで引用されているように、判例においても新規性や非自明性の判断の際しそのような表現が使われることがある。

もっとも、パートナー弁護士の挙げた適切な議論の進め方というのは、クレーム発明についての新規性主張の王道と言って良いだろうし、均等(“equivalent”)という言葉に対する違和感もわかる気がする。その一方、上述した若手弁護士たちの理屈もそれなりに筋が通っていると言う事で、どちらかが正しいと言える問題ではないのかもしれない。

ちなみに、その場にいた私はと言えば、屁たれな英語力で議論に参加する度胸もなく、ただ、ヘラヘラ皆さんの議論を聞いてました。。。

それはさておき、指導する側される側の間で、日常の実務におけるこういう忌憚のない意見交換ができる環境はとても大切であると思う。これは米国の事務所でも日本の事務所でも全く変わらないと感じた次第です。

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まとめteみた.【閑話 -定例ミーティング-】

企業の知財/法務部であれ、特許/法律事務所であれ、多くの職場では、業務連絡のためのミーティングが何らかの形で定期的に行なわれているものと思う。小職の勤務する事務所では、技術分野や担当顧客によって編成されたグループ毎に日程を設定し、定期的なミーティングを...
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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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