米国の一地方都市で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

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ウェブ翻訳

☆新着情報☆ 新事務所“Nakanishi IP Associates, LLC”開設のお知らせ(完全日本語対応によるきめ細やかなサービスで米国における強い特許の取得をお手伝い致します。)

「耳よりなニュース」と言うほどでもないが、欧州特許庁(European Patent Office: EPO)が特許翻訳用に特化したGoogle翻訳の機能をEspasnet(EPOの特許文献検索エンジン)に組み込んだ。

今のところ、利用可能なサービスは、データベースで検索可能な文献について、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、スウェーデン語間の翻訳であるが、今後、翻訳可能な言語の種類を随時拡張していくということだ。

ところで、何もEspasnetに限らず、例えばGoogleが提供する一般向けの翻訳機能(Google 翻訳)を使えば、日本語を含め、多くの言語から英語への機械翻訳が可能である事は皆様もご存知と思う。

今回は、その活用法について少々。

以前、「米国特許商標庁(USPTO)に特許出願を行った者は、特許性に関して発明に重要な影響を及ぼす情報であって、出願人が知っている全ての情報を、USPTOに情報開示陳述書(Information Disclosure Statement)として提出しなければならない。」という制度の説明、また、「特許侵害訴訟において、出願手続きの過程おいて情報開示義務違反があったと認められた場合、裁判所は、出願人が、出願手続における庁への誠意誠実の義務(duty of candor and good faith in dealing with the Office)を怠り、不正行為(inequitable conduct)を行ったものと認定し、当該特許権は権利行使不能(unenforceable)という判断を下すことがある。」という説明をした。

この開示義務の対象となる情報には、例えば、米国特許出願に対応する日本の基礎出願の審査において日本特許庁により発行された拒絶理由通知等も含まれる。そして、日本特許庁により発行された日本語の拒絶理由通知については、その英訳を添えてUSPTOに提出しなければ、情報開示義務を完全に果たした事にならない。

一方、昨年(2011年)5月の米国連邦控訴裁判所の大法廷によるTherasense v. Becton事件の判決により、「IDS提出義務違反の不正行為の認定要件としては、(1)隠蔽された事実が特許性に及ぼす重要性(度)と(2)隠蔽の意図の存在、という2つの要素を独立して判断すべきであり、要件(1)と(2)の何れか一方でも欠いていれば不正行為は成立しない。」という判断基準が明らかにされた。

そこで、(必ずしもこの判決が決め手というわけではないのだが)とりあえずIDSの提出義務をきちんと果たしておき、将来、せっかく取得した特許が、不正行為の存在を理由に権利行使不能となる最悪の事態だけは極力回避したいという出願人の立場に立つと、出願の過程において、情報隠蔽の意図がない事をきっちり示しておけば、情報開示義務違反の不正行為の責を問われることはないと思われる。

そうすると、上記のような日本語の拒絶理由通知の翻訳についても、少なくとも情報開示義務違反による不正行為の認定を回避する目的であれば、例えばGoogle翻訳を使った翻訳文でも、十分にその役割を果たすことができるだろう。

なぜ、このような話をするのかと言うと、通常、上記のような日本の基礎出願における拒絶理由通知の翻訳は、翻訳者(マンパワー)に任される場合が多く、例えば一企業における米国特許出願の管理業務全体として見れば、かなりの額の翻訳費用(人件費)が発生していると思われるからである。この作業を全てGoogle翻訳のような機械翻訳に任せれば、その翻訳料分の経費を軽減できる理屈になる。出願コストを削減する為の方策として選択の余地ありと思う。

もっとも、IDSには二つの役割があり、上記のような情報開示義務の遵守という役割の他、もう一つ、クレーム発明の特許性について、審査官にしっかりと審査してもらい、無効となり難い強い特許を取得するという役割もある。そして、機械翻訳の質も年々良くなってきているとはいえ、無論、翻訳者(人間)の仕事にはまだまだ遠く及ばない。そのような観点から見れば、IDS提出用の拒絶理由通知の翻訳も、機械翻訳などに任せず、信頼のおける翻訳者に任せるべきという考え方もまた然りである。

この辺りは、IDSの目的をどのように捉え、コストと質のどちらを優先するかという話になるのだろう。一概にどちらが良いとは言えない話ではありますが。。。

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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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