FC2ブログ

米国カリフォルニア州で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が、日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

審査官インタビューについて思うこと

☆新着情報☆ 新事務所“Nakanishi IP Associates, LLC”開設のお知らせ(完全日本語対応によるきめ細やかなサービスで米国における強い特許の取得をお手伝い致します。)

審査係属中の出願について、出願人の代理人は、USPTOの審査官と面接(審査官インタビュー)を行うことができる(MPEP713)。審査官インタビューは、代理人が直接USPTPに出向いて行う他、電話やビデオ会議等を通じて行うことができる。 私の勤める特許事務所は、米国特許庁所在地であるワシントンDC近郊(バージニア州)から遠方の地にある事もあり、審査官インタビューは電話を通じて行うことが多い。

一般に、審査官インタビューを行う目的としては、審査対象の出願に係るクレームの特許性についての議論がほとんどであろう。

米国の特許出願について代理人資格のない私の業務は、米国の特許弁護士の業務の補助であるし、そもそも、私の英語力は審査官と口頭で議論を行えるようなレベルに達していない(汗)。

というわけで、自分の担当案件について顧客から審査官インタビューの依頼があった場合、対象出願のクレームや補正案、拒絶理由、顧客の要望を整理し、事務所の弁護士に説明して審査官に電話インタビューを行ってもらう。

まあ、インタビューのはじめに当方の弁護士に促され、担当の審査官に「Hello」とか挨拶くらいはするが(自分で言うのもなんだが、かなり間抜けだ。。。)

インタビューの間は、事務所の弁護士と審査官のやり取りをじっと聞きながらメモを取る。終了後、インタビューを行った弁護士にうまく聞き取れなかった内容を質問したり、意見を聞いたりしながら、顧客への結果報告や今後の対応案を検討する。

日本の顧客から審査官インタビューの要請を受けるケースは結構多く、今の事務所に勤めるようになって3年半、このような形で今までに立ち会った審査官インタビューも、数えてみれば数十回になる。

その中で気づいたことを挙げてみたい。

出願人側から審査官にインタビューを申し込むのは、殆どの場合、Office Action におけるRejection やObjectionの解消がその目的である。そして、顧客からの依頼内容によって、その目的は大まかには次の3つに分かれるように思う。

1.出願にかかる発明(クレーム)、又は拒絶理由の引用文献の開示内容の理解について、審査官が明らかに勘違いをしている場合、その誤解を解く。
2.審査官の主張や示唆に対し、出願人側から補正等を行う心積もりがあり、そのような補正によってRejection やObjectionを解消できるか否かを、審査官に確認する。
3.102条や103条の拒絶理由にかかる審査官の実質的な主張内容について議論する。

上記(1)~(3)の理由のうち、インタビューによって最も大きな成果が得られる可能性が高いと思うのが(1)のケース。このケースでは、書面ではなかなか伝わらない誤解が解け、状況が一変して審査がスムーズに運ぶようになる事も少なくない。

次に、(2)のケース。このケースの場合、審査官が、率直な心証を語ってくれるケースは極めて稀で、「補正によって、出願人が、そのような事項を明確にしたいのはよく分かった。そして、その明確にされた事項によって、引例と○○の点が異なるという出願人の主張もよく分かった。後は、こちらで再度、検討、調査を行い、書面にて然るべく回答を発送する。」というような返答でインタビューを終了するケースがほとんどだ。稀に、インタビューを通じて審査官の心証が大きく変わる事もあるにはある。

残念ながら、(3)のケースでは、私の経験の限りでは、実質的な成果があったと言えるケースはほとんどなかった。

実際、審査官インタビューは、活用の仕方によっては権利化を効率的に促進するツールとなる。この事は疑いがない。しかし、これを行う際には、ある程度目的を明らかにする事がとても大事だと思う。

例えば上記(1)のケースのように、クレームや技術の解釈等についての審査官の誤解を解く為のインタビューは非常に効果的で、審査の促進に役立つ場合が多い。

その一方、(2)のケースのように、補正後のクレームについての審査官の心証の打診というのは、時間と経費をかけた割にはあまり大きな効果を期待できない場合が多い。

というのは、一見、面接によって審査官が納得し、「確かにその補正なら、前回挙げた引例を根拠にした拒絶理由は解消できますね。」というコメントを出したようなケースは、それが通常の書面の応答(Reply to Office Action)であったとしても、同じ結果が得られたであろうと思えるケースである事がほとんどなのだ。そのような場合でも、インタビューの後、どのみち書面での応答を行う事が必要になる。結果として後から考えてみれば、出願人の立場からすると、現地代理人とのやり取りと、その分の経費が一回分多くにかかっただけ、ということになってしまう。ただし、一応例外があって、このようなケースで、インタビュー中、審査官がこれまで出していなかった(ある意味、隠し玉のような)引例を提示する場合がある。この場合は非常にラッキーで、出願人側の対応として、次回の書面応答時に、インタビューで提示された引例(隠し玉)に対する議論やクレーム補正を先回りして行う事ができる。

審査官インタビューについて、現地代理人の立場から、特定の状況で、今、インタビューをするのが効果的であると顧客に提言したり、顧客からの依頼に対し、この状況でインタビューを行ってもほとんど無意味と水をさしたりするのは、ちょっと難しい。

というのは、どのような状況下であれ、インタビューが吉と出るか凶と出るか(功を奏するか、無意味なものになるか)について、代理人として内心だいたい予想がついても、それは口にできないのだ。結局のところ、どちらの可能性も100%否定する事はできないからだ。

このため、特に費用対効果を考えた場合、出願人(依頼者)の立場として、審査官インタビューの依頼に際しては、その目的と、現在の状況から得られると予想される効果を、事前によく検討、分析する事がとても重要に思える。状況とタイミング次第で、審査官インタビューは、非常に強力なツールにもなり得る一方、単なる時間と労力の浪費に終わってしまう事もある。


にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ
にほんブログ村
ご閲覧いただきありがとうございます!
ブログランキングに参加しています。
クリックして頂けると大変嬉しいです。
関連記事
スポンサーサイト



コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
フリーエリア
プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

リンク
このブログをリンクに追加する
最新記事
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR