米国の一地方都市で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

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米国特許法101条 (発明としての適格性) に関するUSPTOの判断基準 (適格性が認められない具体例4)

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演題:
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 前回に続き、コンピュータプログラムに関するクレーム発明が101条要件を充足するか否かの判断プロセス (Step 1, 2A, 2B) を説明する為にUSPTOの審査基準に示された具体例のうち、適格性の認められない (101条要件を満たさない) 4番目の具体例を紹介する。これが、クレーム発明が101条要件を充足するか否かを判断するにあたり、USPTOが示した最後の具体例である。

 原文(引用元)はこちら(18ページ目です)⇒Abstract Idea Examples (January 2015)

 本例もまた、特許侵害訴訟において、クレームが101条要件を満たしているか否かが実際に裁判所で争われた事例 (Ultramercial v. Hulu and WildTangent (Fed. Cir. 2014)) で問題となったクレームである。上記事件で問題になったクレームについて、裁判所は、101条要件を満たさないと判断している。

 本件で問題となったクレーム発明は、著作物としてのデジタルメディア(ビデオやオーディオ等)のプライバシーに関する問題であって、特に現金やクレジットカードを利用する事ができない状況にある人の問題(不便)を解決することを目的としている。詳しくは、この発明は、テレコミュニケーション・ネットワークを介し、著作権のような知的財産権によって保護されている製品を配信する行う為のものである。より詳しくは、製品としての著作物に購入(希望)者がアクセスすると、資金提供者からのメッセージ(広告)を受け取るか、資金提供者とやり取りができるようにする。その結果、資金提供者が(当該製品の)知的財産権の所有者に代金を支払い、当該製品の購入(希望)者は、直接支払いをすることなく、当該製品を取得する事ができる。クレームには、発明の構成要素として、上記のような処理を行うための詳細な手順が記載されている。

問題となったクレームのうち代表的なもの:
1. A method for distribution of products over the Internet via a facilitator, said method comprising the steps of:
  a first step of receiving, from a content provider, media products that are covered by intellectual property rights protection and are available for purchase, wherein each said media product being comprised of at least one of text data, music data, and video data;
  a second step of selecting a sponsor message to be associated with the media product, said sponsor message being selected from a plurality of sponsor messages, said second step including accessing an activity log to verify that the total number of times which the sponsor message has been previously presented is less than the number of transaction cycles contracted by the sponsor of the sponsor message;
  a third step of providing the media product for sale at an Internet website;
  a fourth step of restricting general public access to said media product;
  a fifth step of offering to a consumer access to the media product without charge to the consumer on the precondition that the consumer views the sponsor message;
  a sixth step of receiving from the consumer a request to view the sponsor message, wherein the consumer submits said request in response to being offered access to the media product;
  a seventh step of, in response to receiving the request from the consumer, facilitating the display of a sponsor message to the consumer;
  an eighth step of, if the sponsor message is not an interactive message, allowing said consumer access to said media product after said step of facilitating the display of said sponsor message;
  a ninth step of, if the sponsor message is an interactive message, presenting at least one query to the consumer and allowing said consumer access to said media product after receiving a response to said at least one query;
  a tenth step of recording the transaction event to the activity log, said tenth step including updating the total number of times the sponsor message has been presented; and
  an eleventh step of receiving payment from the sponsor of the sponsor message displayed.

Step 1:
 上記クレームは、プロセス、特に、インターネットを通じてメディアや広告を配信するための一連の工程から構成されている。従って、プロセス (process) としてのカテゴリーに属するための十分条件を満たす。⇒Step 1の判断は“YES”

Step 2A:
 それでは、上記クレームは、非法定の(i) 自然法則、(ii) 自然現象、(iii) 抽象概念の何れかを対象とする法的例外 (judicial exception) であるか?
 当該クレームには、著作物としてメディアへのアクセスと引き換えに、広告を表示する工程が記載されている。これは、「広告に、為替や通貨として役割を担わせる」という概念に相当し、過去、裁判所が抽象概念と認定した「商業的な実践に関連する人的活動(ビルスキ事件で問題になったクレームの『ヘッジ(hedging)』)」に似ている。クレームに含まれる他の限定事項は、上記「広告に、為替や通貨として役割を担わせる」という概念の下位概念に過ぎない。すなわち、著作物としてのメディアを受け取り、広告を選択し、選択された広告の閲覧と当該メディアの購入を提案し、当該広告を表示し、当該広告を閲覧した消費者が当該メディアにアクセスできるようにし、広告主である資金提供者から支払いを受け取るといった工程であり、これらの工程(限定事項)もまた、抽象的な概念(人的活動)に過ぎない。従って、クレームに記載された発明は、抽象的な概念 (abstract idea)、すなわち法的例外 (judicial exception) に該当する。⇒ Step 2Aの判断は“YES”

Step 2B
 では、クレームに「追加の限定事項 (additional limitation)」が記載されており、その追加の構成要素が、クレームを「全体として」見た場合に、「広告に、為替や通貨として役割を担わせる」という概念を「有意に越えるもの」(“significantly more”)に変えていると言えるか?問題となったクレームには、活動記録にアクセスしその記録を更新し、消費者からの広告閲覧の要求を命じ、一般公開を制限し、情報伝達媒体としてインターネットを使う、といった追加の構成要素が含まれる。しかし、これらの工程は、何れも定型的で、主な工程に付随する定型的な手順に過ぎず、重要な構成要素ではない。そうすると、クレームの内容は、個々の工程を見ても、全体として見ても、「為替や通貨に相当するものとして広告を使う」という抽象的な概念を、「有意に越えるもの」(“significantly more”)に変えるものが付加されているとは言えない。⇒ Step 2Bの判断は“NO”

 従って、同クレームに法の保護対象としての発明の適格性は認められない。

私見:
 これまで、コンピュータプログラムに関するクレーム発明が101条要件を充足するか否かの判断プロセス (Step 1, 2A, 2B) を説明する為にUSPTOの審査基準に示された具体例のうち、適格性の認められる (101条要件を満たす) 4つの具体例と、適格性の認められない (101条要件を満たさない) 4つの具体例、計8つの具体例を紹介した。

 これらの具体例を検討してみても、101条要件を満たすか否かの判断の決め手がこれだと、一言で言い切るのは難しいように思う。

 ただ、少なくとも、一般的なコンピュータによって実行されるプログラムについては、記録媒体、プロセス、システム等、どのようなクレーム形式をとっても、当該プログラムの実行により、「ある程度の特殊性」の認められるアウトプット(信号やデータ、例えばウイルスを除去されたデータとか、同じハードウェアを使ってもそれを使うだけで画質に改善が見られる特殊な画像データとか)が認められなければ、101条要件を充足すると認めてもらえない、という事は言えそうだ。

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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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