米国の一地方都市で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

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米国特許法101条 (発明としての適格性) に関するUSPTOの判断基準 (適格性が認められない具体例1)

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 さて、前回に続き、コンピュータプログラムに関するクレーム発明が101条要件を充足するか否かの判断プロセス(Step 1, 2A, 2B)を説明する為にUSPTOの審査基準に示された具体例のうち、適格性の認められない (101条要件を満たさない) 2番目の具体例を紹介する。

原文(引用元)はこちら(15ページ目です)⇒Abstract Idea Examples (January 2015)

 本例もまた、特許侵害訴訟において、クレームが101条要件を満たしているか否かが実際に裁判所で争われた事例 (Planet Bingo, LLC v. VKGS LLC, 576 Fed. Appx. 1005 (Fed. Cir. 2014)) で問題となったクレームである。上記事件で問題になったクレームについて、裁判所は、101条要件を満たさないと判断している。

 本発明は、ウェブサイト上に表示されたチケットの番号を印刷することのできる自動「ビンゴ」システムに関する。同システムは、コンピュータを使ってチケットを印刷し、その情報を管理し、認証する。同システムに使用されるコンピュータは、プレーヤーに対応する特定のビンゴ番号の組合わせを記憶し、そのプレーヤーのビンゴ番号のチケットを印刷する事により当該プレーヤーがそのビンゴ番号を使ってビンゴの各セッションのゲームを行えるようにする。この自動化されたシステムは、ビンゴゲームの全ての工程を管理し、改ざんの問題を解決し、購入時のセキュリティに関するリスクを最小限に抑えるといった機能を有する。

 問題となったクレームのうち代表的なもの:

1. A system for managing a game of Bingo which comprises:
(a) a computer with a central processing unit (CPU) and with a memory and with a printer connected to the CPU;
(b) an input and output terminal connected to the CPU and memory of the computer; and
(c) a program in the computer enabling:
(i) input of at least two sets of Bingo numbers which are preselected by a player to be played in at least one selected game of Bingo in a future period of time;
(ii) storage of the sets of Bingo numbers which are preselected by the player as a group in the memory of the computer;
(iii) assignment by the computer of a player identifier unique to the player for the group having the sets of Bingo numbers which are preselected by the player wherein the player identifier is assigned to the group for multiple sessions of Bingo;
(iv) retrieval of the group using the player identifier;
(v) selection from the group by the player of at least one of the sets of Bingo numbers preselected by the player and stored in the memory of the computer as the group for play in a selected game of Bingo in a specific session of Bingo wherein a number of sets of Bingo numbers selected for play in the selected game of Bingo is less than a total number of sets of Bingo numbers in the group;
(vi) addition by the computer of a control number for each set of Bingo numbers selected for play in the selected game of Bingo;
(vii) output of a receipt with the control number, the set of Bingo numbers which is preselected and selected by the player, a price for the set of Bingo numbers which is preselected, a date of the game of Bingo and optionally a computer identification number; and
(viii) output for verification of a winning set of Bingo numbers by means of the control number which is input into the computer by a manager of the game of Bingo.

上記のクレームが101条要件を満たすか否かの判断プロセスは以下の通り。

Step 1:
 上記システムのクレームは、その構成要素として、コンピュータ、入出力装置、ビンゴゲームの管理を可能にするプログラムを含むことから、デバイスの組合せ (a combination of devices) から構成されるものであると言える。従って、装置 (machine) としてのカテゴリーに属するための十分条件を満たす。⇒Step 1の判断は“YES”

Step 2A:
 それでは、上記クレームは、非法定の(i) 自然法則、(ii) 自然現象、(iii) 抽象概念の何れかを対象とする法的例外 (judicial exception) であるか?

 当該クレームには、プログラムによって実行される工程(i)~(viii)が記載されていて、これらはビンゴゲームを管理する為の工程である。これらの工程には、プレーヤを特定するための標識及び整理番号を割り振り、当選ビンゴ番号を確定する処理が含まれる。このクレームに記載されたビンゴゲームの管理は、「頭の中で」又は「コンピュータによって」実行する事が可能なものであることから、抽象的な概念 (abstract idea)、すなわち法的例外 (judicial exception) に該当する。⇒ Step 2Aの判断は“YES”

Step 2B
 では、クレームに「追加の限定事項 (additional limitation)」が記載されており、その追加の構成要素が、クレームを、「全体として」、法的例外 (judicial exception) を「有意に越えるもの」(“significantly more”)に変えていると言えるか?

 問題となったクレームには、追加の構成要素として、コンピュータの他、中央処理ユニット(CPU)、メモリ、プリンタ、入出力端末、プログラムが記載されているが、これらは、所定のプログラムの実行を通じてデータの記憶、再生、処理が行われるよう、一般的なコンピュータが具備している構成要素にすぎない。言い換えれば、単に、コンピュータの通常の機能の範囲内で、上記抽象概念の実施するよう指示を与えるための構成に過ぎない。従って、そのような追加の限定事項は記載されていない。⇒ Step 2Bの判断は“NO”

 従って、同クレームに、法の保護対象としての特許の適格性は認められない。

私見:
 前回紹介した「デジタル画像再生システム」の例と発明のタイプはかなり違うが、クレーム発明に対し、本質的には同じような見方をして特許の適格性(101条要件)を否定しているように思う。
 前回の「デジタル画像再生システム」の場合は入力された情報の技術的な利用を前提として判断や処理を行っているのに対し、今回の「ビンゴゲームの管理システム」の場合は人為的なルールに従うゲームを実行(管理)するプログラムであると言える。ただ、結局のところ、裁判所が両者に対し特許の適格性を認めなかった大きな理由は、両者に共通の、しかもかなり単純な判断基準に帰着するように思う。すなわち、通常のコンピュータ又はその一般的な拡張と世間に認識されるシステムを使って実行できる(発明者の意図する機能を発揮できる)コンピュータプログラムが発明のポイントである場合、101条要件は満たされないという考え方だ。
 そうすると、出力されるデータや画像等に物理的に特殊な性質があるとか、一般的ではない特殊なハードウェアがクレーム発明に必須の構成要素になっている等といった付加条件がなければ、例えばコンピュータゲームの類は、101条要件を満たせないという事になるのだろうか?裁判所の見解や現行のUSPTOの判断基準に従えば、残念ながら、そのように解釈するしかなさそうだ。なんだか、特許の存在意義が薄れてしまう危惧を抱いてしまうのは私だけでしょうか。。。


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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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