米国の一地方都市で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

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米国特許法101条 (発明としての適格性) に関するUSPTOの判断基準 (適格性を有する具体例4)

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前回に続き、クレームに記載された発明の本質的な部分がコンピュータプログラムに関するものである場合、これが101条要件を充足するか否かの判断プロセス(Step 1, 2A, 2B)を説明する為にUSPTOの審査基準に示された4番目の具体例(適格性を有する具体例)を紹介する。

原文(引用元)はこちら(10ページ目です)⇒Abstract Idea Examples (January 2015)

本例もまた、前回と同様、特許侵害訴訟において、クレームが101条要件を満たしているか否かが実際に裁判所で争われた事例 (SiRF Technology Inc. v. International Trade Commission, 601 F.3d 1319 (Fed. Cir. 2010)) で問題になったクレームを、101条要件の判断基準が分かり易くなるよう、USPTOが独自に修正したものである。上記事件で問題になったクレームについて、裁判所は、101条要件を満たすものと判断している。USPTOによれば、修正版のクレームも101条要件を満たす。その根拠は、USPTOによれば、対象クレームが「他の技術又は技術分野における改善に関わっている為」である。

問題となったクレーム(USPTOによる修正版):
1. A system for calculating an absolute position of a GPS receiver and an absolute time of reception of satellite signals comprising:
a mobile device comprising a GPS receiver, a display, a microprocessor and a wireless communication transceiver coupled to the GPS receiver, the mobile device programmed to receive PN codes sent by a plurality of GPS satellites, calculate pseudo-ranges to the plurality of GPS satellites by averaging the received PN codes, and transmit the pseudo-ranges, and
a server comprising a central processing unit, a memory, a clock, and a server communication transceiver that receives pseudo-ranges from the wireless communication transceiver of the mobile device, the memory having location data stored therein for a plurality of wireless towers, and the central processing unit programmed to:
estimate a position of the GPS receiver based on location data for a wireless tower from the memory and time data from the clock,
calculate absolute time that the signals were sent from the GPS satellites using the pseudo-ranges from the mobile device and the position estimate,
create a mathematical model to calculate absolute position of the GPS receiver based on the pseudo-ranges and calculated absolute time,
calculate the absolute position of the GPS receiver using the mathematical model, and
transmit the absolute position of the GPS receiver to the mobile device, via the server communication transceiver, for visual representation on the display.

Step 1:
上記システムのクレームは、その構成要素として、携帯機器及びサーバーの組合せを含んでおり、装置(machine)としてのカテゴリーに属するための十分条件を満たす。⇒Step 1の判断は“YES”

Step 2A:
それでは、上記クレームは、非法定の(i) 自然法則、(ii) 自然現象、(iii) 抽象概念の何れかを対象とする法的例外 (judicial exception) であるか?

当該クレームは、裁判所が、法的例外 (judicial exception) としての抽象概念と考える数学的な演算 (例えば、擬似距離及び絶対時間、並びに数理モデルの算出) を記載したものである。従って、当該クレームは、法的例外 (judicial exception) を対象としている。⇒ Step 2Aの判断は“YES”

Step 2B
続くStep 2Bでは、クレームに記載された発明が非法定の (i) 自然法則、(ii) 自然現象、(iii) 抽象概念の何れかを対象とするものであっても、クレームに「追加の限定事項(additional limitation)」が記載されており、その追加の構成要素が、クレームを、「全体として」、法的例外 (judicial exception) を「有意に越えるもの」(“significantly more”)に変えているか否か、を判断する。

先ず、上記クレームには、位置を推定し、絶対時間を算出し、数学モデルを使って絶対位置を算出するよう、中央処理ユニット (CPU) を用いて数学的な演算を行う旨の記載がある。

また、同クレームには、メモリに記憶された位置データと、クロックからの時間データとを用いるという記載もある。CPU、メモリ、及びクロックは、コンピュータの構成要素として極めて一般的なものであり、これらが、クレームを、「全体として」、法的例外 (judicial exception) を「有意に越えるもの」(“significantly more”)に変えているとは言えない。

しかし、同クレームはさらに、擬似距離を算出し、算出された擬似距離をサーバに送信し、サーバから位置情報を受信し、サーバから受信した絶対位置に関する情報を表示するための構成として、GPS受信機、マイクロプロセッサ、トランシーバ、及びディスプレイを含む。そして、上記CPUは、遠隔サーバ及び複数の衛星を通じて携帯機器と協働することにより、同携帯機器にその絶対位置を決定、表示させるよう機能する。同クレームには、数学的な処理に加えて意義のある限定事項が含まれており、この限定事項が有り為、クレーム発明は、コンピュータが数学的処理を実行するだけのものではないと言える。

同クレームは、意義のある限定事項の付加により、グローバルポジショニング(全地球測位)という従来技術の改善に、数学的な処理を応用したものとなっている。

すなわち、同クレームに記載された発明によれば、受信機による信号取得の感度を向上させ、弱い信号しか受信できない環境下にまで全地球測位の適用範囲を拡大し、各地の情報を携帯機器のディスプレイに表示させることが可能になる。よって、クレーム発明を各構成要素の組合せとして捉えた場合、それは、法的例外 (judicial exception) を「有意に越えるもの」(“significantly more”)であると言える。⇒ Step 2Bの判断は“YES”

私見:前回紹介した「グレイスケール画像のハーフトーン処理方法」の発明の場合と同じく、この事例においても、USPTOは、判例に照らし、一般的なコンピュータで処理可能な工程と、一般的なコンピュータの構成要素(プロセッサ、メモリ等)を組み合わせただけでは、101条の要件を満たす事はできないと明言している。

そして、この事例で取り上げられたクレームは、それだけでは101条の要件を満たさない構成要素(CPU、メモリ、及びクロック)に加え、「遠隔サーバ及び複数の衛星を通じて携帯機器と協働することにより、同携帯機器にその絶対位置を決定、表示させる」といった趣旨の限定事項を付加されている事で、これら構成要素の組合せにより、全体として、法的例外 (judicial exception) を「有意に越えるもの」(“significantly more”)と判断されている。

追加の限定事項により、クレーム全体が、コンピュータによる単なる演算処理という枠を越え、「特定の従来技術」の改善又は進歩(to improve an existing technology)に応用されていれば、101条要件を満たすという理屈は分かる気がするのだが、ここで言う(to improve an existing technology)という文言が少し分かりづらい。「技術」(technology)というのは相当に範囲が広いと思う。医療とか、化学合成とか、化学分析とか、そういう手作業的な技術の効率改善とか、そういう類のものでも良いのか?答えは「否」であるような気がする。前回紹介した「グレイスケール画像のハーフトーン処理方法」の発明と、今回紹介した「GPSサーバの絶対位置及び衛星信号受信の絶対時間を算出する為のシステム」との共通点から推察するに、「何らかの制御を伴い、且つ、一定の特殊性のある技術」、というのがこの「技術」(technology)に該当するのかもしれない。

(次回に続く)

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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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