米国の一地方都市で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

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Apple Inc. and Next Software Inc. v. Motorola Inc. and Motorola Mobility Inc. (Fed. Cir. 2014)

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Apple Inc. and Next Software Inc. v. Motorola Inc. and Motorola Mobility Inc. (Fed. Cir. 2014) (Apple v. Motorola事件)

連邦巡回控訴裁判所 (CAFC) が3ケ月ほど前 (2014年4月25日) に示した判例を紹介する。クレームの構成要素が「ミーンズプラスファンクション」と判断されるか否かの判断基準について、恐らく、最新で且つかなり重要な判例ではないかと思う。米国特許出願の実務を行う者とにとっては、ぬか喜びはできないものの一応朗報と言えそうで(たぶん。。。)、その理解は中間処理実務にも役立つと思う。

先ず、以前の説明の繰り返しになるが、米国法上における「ミーンズプラスファンクション」 クレームの性質は概ね以下の通りである。

(1) 35 U.S.C. 112(f) 又は pre-AIA 35 U.S.C. 112 第6段落に規定の、いわゆる「ミーンズプラスファンクション」 と認定されたクレーム要素については、権利行使のみならず、特許有効性(明細書記載要件)を判断する上で、特許権者に著しく不利な解釈がなされれしまう。
(2) クレーム中において、"means for..."という表現を使用すると、そのクレーム要素がミーンズプラスファンクションであるという強力な推定が働き、出願人又は特許権者の側が、反証の義務を負うことになってしまう。
(3) たとえ"means for..."という表現を使用していなくても、特段の構造的な意味合いを持たない用語について、その具体的な構造を示すことなく機能のみと組み合わせたもの、例えば、加熱部材(a member for heating)等もミーンズプラスファンクションと認められる。

MPEPでは、実際の特許出願において審査官がクレームの構成要素をミーンズプラスファンクションと認定するための十分条件として、以下の通り、一応の基準を示している (MPEP2181)。

---------------------------------------
(A) the claim limitation uses the term “means” or “step” or a term used as a substitute for “means” that is a generic placeholder (also called a nonce term or a non-structural term having no specific structural meaning) for performing the claimed function;
(B) the term “means” or “step” or the generic placeholder is modified by functional language, typically, but not always linked by the transition word “for” (e.g., “means for”) or another linking word or phrase, such as "configured to" or "so that"; and
(C) the term “means” or “step” or the generic placeholder is not modified by sufficient structure, material, or acts for performing the claimed function.
(日本語訳)
(A) 対象となるクレームの構成要素に、“means for”、“step for”、又は 一般的な代用語(generic placeholder)である“means”(手段)代えて用いられる他の用語(特定の構造の意味合いをもたない場当たり的な用語又は非構造用語)が使われていること、
(B) 当該“means for”、“step for”、又は一般的な代用語が機能を示す言葉、必ずしもそうとは限らないが典型的な例としては、連結語としての"for"(例えば"means for"などとして使われるもの)や、その他"configured to"、"so that"のような連結句や節による修飾を伴うこと、
(C) 当該“means for”、“step for”、又は一般的な代用語が特定の機能を達成するために十分な構造、材料、又は動作(作用)を伴っていないこと。
---------------------------------------
上記の基準によれば、「もともとmeans for...として構成要素の機能のみ表現したものを、特定の構造の意味合いを持たない用語にconfigured to...を組み合わせた表現に修正しても、ミーンズプラスファンクションの認定を免れることはできないという事になる。

そして実際、機能を表現したクレーム要素については、当該要素自体が特定の構造と認められるか、特定の構造と結びついている認められない限り、これをミーンズプラスファンクションであるとする審査官の主張を覆すのが非常に難しくなりつつある傾向があった。

Apple v. Motorola事件は、Apple社ほか一社がMotorola社ほか一社に対し特許侵害を理由に訴えを提起した裁判である。本事件では、幾つかのクレーム要素について、それらがミーンズプラスファンクションに該当するか否かが問題になった。

例えば、問題となったクレームのうち、コンピュータ装置 (computing device) に関するクレームには、当該装置に記憶されたプログラムが実行する複数のプロセスが含まれていて、その中には、“…heuristic for…”という表現のクレーム要素がいくつかあり、これは「ユーザーによる特定の入力操作を特定のコマンドと認識する処理」を意図するものであった。

例えば、以下のようなクレーム要素があった。

“a next item heuristic for determining that the one or more finger contacts correspond to a command to transition from displaying a respective item in a set of items to displaying a next item in the set of items”
(日本語訳)
一本指又は二本指の接触を、複数項目からなるセット中の一項目を表示した状態から、他の項目(次項目)を表示する状態へ、(タッチスクリーンの表示の)変更を命じるコマンドと判断するための次項学習

上記のようなクレーム要素 “a next item heuristic for…” について、一審である連邦地裁は、35 U.S.C. 112第6段落の適用対象である(ミーンズプラスファンクションに該当する)と判断した。そして、同クレーム要素がミーンズプラスファンクションであるという解釈に基づき「非侵害」の略式判決(summary judgment)を下した。

ところが、CAFCは、上記連邦地裁の判断を覆し、上記のクレーム要素 “a next item heuristic for…” は35 U.S.C. 112第6段落の適用対象ではなく、ミーンズプラスファンクションに該当しないという見解を示した。

その根拠は、大雑把に言えば、クレーム要素がミーンズプラスファンクションであるという強力な推定が働くのは、原則として、クレーム中において"means for..."という表現が使用されている場合であり、そもそもミーンズプラスファンクションと解釈される事により当該特許が無効になり易くなるという傾向がある中で、出願人がクレームをドラフトする段階で意図しなかったであろう解釈(当該クレーム要素がミーンズプラスファンクションに該当するというもの)を裁判所が行うのは妥当でない、という趣旨であった。

個人的には、とても妥当な判断だと思う。これを機に、特にソフトウエア関連発明のクレーム中、コンピュータの処理手順を示すクレーム要素は何でもかんでもミーンズプラスファンクションと判断されてしまい、反論も難しくなる一方と感じていた近頃の審査傾向に、歯止めがかかる事を切に願います。

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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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