「クレームに記載された文言又は表現が曖昧である為に発明が不明確である」といった理由で112条(b)項違反の拒絶理由を受ける事がある。
この種の112条(b)項違反の拒絶理由には、幾つかパターンがあるが、そのうちの一つに、"relative terminology"というのがある。
クレームにおいて、"terms of degree"(程度を示す用語)は、発明を十分明確に表現することにならない場合があるというものだ。
この種の用語は、出願時において、できれば避けた方が無難な用語ではあるけれど、以下の通り、場合によっては、112条要件違反を主張する審査官に反論が可能な場合もある(ケースバイケースです)。
"essentially"とか "substantially"などは、問題になり易い用語として良く知られている。何れも「本質的に」とか、「実質的」という意味になる。これらの用語を使ったからと言って、必ず112条(b)項違反になるわけではないが、問題になる可能性は高い。要は、どの程度が「本質的」又は「実質的」なのかが、明細書を照らし合わせてみた時、当業者にとって明確であると言えれば、112条(b)項違反にはならないという事になっている (In re Marosi (Fed. Cir. 1983), Exxon Research and Eng’g Co. v. United States (Fed. Cir. 2001))。
"terms of degree"(程度を示す用語)として、112条(b)項要件が問題になった用語には、"near"(近傍)という用語もある。これも、「近傍」が「どの程度近い」ことを意味するのかが、明細書を照らし合わせてみた時、当業者にとって明確であると言えれば、112条(b)項違反にはならない、とされた判例がある(Young v. Lumenis, Inc. (Fed. Cir. 2007))。
それから、少し面白い表現として"so dimensioned as to be insertable through the space between A and B"(部材Aと部材Bの間に挿入可能な"dimension"(形状や大きさ))というのがある。実際にこの表現が問題になったケースでは、裁判所は、概ね以下のような趣旨で、上記の表現は112条(b)項要件を満たすと判じている。
「(クレームの文脈から)当業者は、クレームで表現された形状や大きさを容易に理解できるし、この表現が、当該技術分野において当該箇所に使用され得るあらゆる部品を意味するわけではなく、有限な範囲に部材(の形状や大きさ)を限定している。」(Orthokinetics, Inc. v. Safety Travel Chairs, Inc. (Fed. Cir. 1986))。
以上
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