先日(2016年11月3日)、米国特許法101条(法上の発明としての適格性)の判断基準について、USPTOの新たな指針を示す書簡(memorandum)が公表された。
https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/McRo-Bascom-Memo.pdfBilski事件(2010年)、Mayo事件(2012年)、及びAlice事件(2014年)の最高裁判決を経て、ソフトウエア関連の発明の米国特許法101条(法上の発明としての適格性)に関する判断基準が、それまで多くの実務者が考えていたものと大きく変わった事は、これまで何度か説明した通りである。
Alice事件の最高裁判決後、最高裁の示した判断基準に沿って、クレームの101条要件が問題になった事件についてかなりの数の連邦控訴裁(CAFC)判決がなされ、多くの特許が101条違反を理由に無効と判断された。
その一方、同じようにクレームの101条要件が問題となり、101条要件を満たすとCAFCが判断した特許もいくつかある。
(1)DDR Holdings, LLC v. Hotels.com, L.P. (Fed. Cir. 2014) :ウェブサイト閲覧システム
Enfish, LLC v Microsoft Corp. (Fed. Cir. 2016) :検索システム
(2)BASCOM Global Internet Services v. AT&T Mobility (Fed. Cir. 2016) :ネットワーク経由で取得したコンテンツにフィルタをかけるシステム
さらに、Alice事件の最高裁判決前のCAFC判決ではあるが、問題となったクレームについて、101条要件を満たすという判断がなされ、その判断について、Bilski事件、Mayo事件、及びAlice事件といった一連の最高裁判決とも齟齬が無いと思われる事件として以下の2つの事件がある。
(3)Research Corp Tech Inc. v. Microsoft Corp. (Fed .Cir. 2010) : 画像処理方法
(4)SiRF Technology Inc v. ITC (Fed Cir 2010) : GPSシステム
そしてさらに、今年(2016年)の9月と11月に、
(5)McRo Inc. DBA Planet Blue v. Atlus U.S.a., Inc. (2016年9月13日判決)
(6)Amdocs (Israel) Ltd. v. Openet Telecom, Inc. (2016年11月1日判決)
という2つ事件において、CAFCが、争いの対象になったソフトウエア関連発明のクレームについて、101条要件を満たすという判決を下した。これらのCAFC判決を受け、米国特許法101条(法上の発明としての適格性)の判断基準について、USPTOが新たな指針(Memorandum)を公表するに至った。
上記の判例は、現行の裁判所の考え方やUSPTOの審査基準に照らし、審査や権利行使の段において101条問題を回避する為、又は、101条問題に直面した際に対策を講じる上で、その鍵となるとても重要な判例であり、検討の価値あり。
今回USPTOが公表した上記書簡(memorandum)では、特に上記(5)McRO事件と(4)BASCOM事件における裁判所の見解が取り上げられ、それらがどう審査に反映されるべきか説明されている。
101条問題で悩む出願人や実務者にとって、少し風向きが良くなるかもしれない。。。ですね。
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