米国特許におけるクレーム解釈の判断基準に、“Doctrine of Claim Differentiation”というものがある。(一つの特許又は出願において)クレーム毎に異なる保護範囲がある(べき)という法理である。 例えば「独立クレーム1と、これに従属するクレーム2とでは、保護範囲に必ず違いがあるという事だ。同一の保護範囲を異なる表現によって記載する事を許容する日本の法制とは少し異なる。
この事は、米国においては、従属クレームが独立クレームに対し、内部付加であれ、外部付加であれ、何らかの限定事項を追加していなければ特許法112条(35U.S.C.112(d))違反になることからも窺い知る事が出来る。
しかし、“Doctrine of Claim Differentiation”の意味するところは、2つのクレームの意味が必ずしも排他的に異なるという事ではない。あくまでも、2つのクレームの保護範囲が同じではないという事だ(例えば、一方が広く、他方が狭いという事でも良い)。
もう少し具体的な話をさせていただく。
例えば、独立クレーム1において、「中空の構造物」という限定があり、従属クレーム2に「前記中空の構造物は1本の円筒である」という記載があるとする。そして、明細書本文には、「中空の構造物」として、1本の円筒を採用している実施例しかなく、それ以外、クレームに記載された「中空の構造物」について他の具体例を示唆するような記載もないと仮定する。
このような場合、例えば特許侵害訴訟において、被告側は、「独立クレーム1に記載された『中空の構造物』というのは、明細書の開示内容(内部証拠)に照らし、『1本の円筒』に限定して解釈されるべきである」という主張をする可能性がある。
上記のような被告側の主張に対し、原告側(特許権者)としては、「従属クレーム2においてわざわざ『1本の円筒』という限定をしているのだから、“Doctrine of Claim Differentiation”に基づき、従属クレーム2とは保護範囲の異なる独立クレーム1に記載された『中空の構造物』は、『1本の円筒』以外の構造、例えば2本以上の中空構造を含めて解釈されるべきである」と反論することができる。そして、“Doctrine of Claim Differentiation”に基づく強力な推定(strong assumption)により、この特許権者の主張の説得力が増すことになるのだ。
つまり、特許権者の立場に立てば、従属クレームの限定が、独立クレームの解釈の拡張(広い権利範囲の確保)の助けになる場合がある。これが“Doctrine of Claim Differentiation”の真髄と言っても良いと思う。
米国特許出願のクレーム構成を考える際、考慮に入れてみてはいかがでしょうか。
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