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米国カリフォルニア州で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が、日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

改正法(AIA)下におけるグレースピリオドの活用

米国特許法改正(AIA: 2011年9月発行)の前後で実務に大きな変更があった制度に、グレースピリオドの適用条件がある。

改正前の法制下で、グレースピリオドとは、「米国出願前1年以内の印刷刊行物等は先行技術とはみなされない」(pre-AIA 35USC §102(b))というものであった。

改正後の法制下(AIA下)においては、このグレースピリオドが、「有効出願日前、すなわち優先権の基礎となっている最先の出願の出願日前、1年以内の発明者による(直接又は間接的な)開示行為に起因する印刷刊行物等は先行技術とはみなされない」(Post-AIA 35USC §102(b)(1),(2))という趣旨に変更された。

AIA下において、グレースピリオドの適用を受けられる刊行物については、審査官がそのような刊行物を見つければ、これを引用文献として、新規性要件(102条)違反の拒絶理由通知(オフィスアクション)を発行する可能性は高い。この場合、出願人としては、米国特許法施行規則 (37 CFR § 1.130)に基づき、当該引用文献における発明の開示が発明者の行為に起因するものである事を発明者自身が宣誓する宣誓書(通称、Rule 130 Declaration)を提出することにより、当該引用文献を先行技術から除外してもらう事ができる。

また、上記のようなグレースピリオドの適用を受けるべき刊行物の存在がある場合、米国出願時において、あらかじめ、明細書(Specification)に米国特許法施行規則 (37 CFR § 1.77(b)(6))に基づく陳述(Statement)を含めることにより、当該刊行物を引例とする新規性要件(102条)や非自明性要件(103条)違反の拒絶理由通知(オフィスアクション)の発行を回避することができる。つまり、予め審査官に釘を刺しておくことで、不要な応答手続きを回避できるという事になる。この場合、対象となる刊行物を出願時にIDSと共に提出しておき、その説明を上記37 CFR § 1.77(b)(6))に基づく陳述(Statement)に含めておくのが良いかもしれない。尚、このような刊行物の情報をIDSに含めても、出願人がそれを先行技術と認めた事にはならない (米国特許法施行規則 (37 CFR §CFR1.97(h)を参照))。

もちろん、グレースピリオドの適用を受けなくてもよい出願が理想ではあるけれど、不測の事態というのは常に起こり得る。グレースピリオドの上手な活用は、状況によっては、米国での特許権取得の大きな助けになりそうだ。

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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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