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米国カリフォルニア州で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が、日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

Alice v. CLS Bank事件 (2014年最高裁判決) を踏まえたUSPTOの予備審査指針(1)

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USPTOのWebsiteへのリンク(Alice v. CLS Bank事件 (2014年最高裁判決) を踏まえたUSPTOの予備審査指針)

米国特許法(35 U.S.C. § 101)に規定された法上の発明 (特許法の保護対象) であるための要件、すなわち、クレームに記載された発明が法の保護対象としての適格性 (eligibility:以下、発明の適格性という) を有するか否かの判断基準について、Bilski v. Kappos 事件 (2010年最高裁判決)、Mayo v. Prometeus 事件 (2012年最高裁判決)、Association For Molecular Pathology v. Myriad Genetic, Inc. 事件 (2013年最高裁判決:Myriad 事件)、それから今年の Alice v. CLS Bank事件 (2014年最高裁判決) という4つの最高裁判決があった。(尚、Myriad事件は重要な判例であるが、自然界に存在するものか単離・精製して得られるもの、又は、それと実質的に同等のものに特許の適格性があるか否かという問題に関するもので、今回取り上げる問題とはちょっと趣旨が異なる。)

とくにソフトウエア関連発明の適格性判断に関して重要な内容を含む判例だが、これらの事件における裁判所の見解と、これを受けた米国特許商標庁 (USPTO) の動きから察するに、今後、とくにソフトウエア関連発明について米国で特許取得を要望する出願人やこの種の発明に関する特許の活用を図ろうとしている特許権者にとって、状況がかなり厳しくなる。。。可能性があるように思う。

先ず、直近のAlice v. CLS Bank事件 (2014年最高裁判決) を踏まえ、今年 (2014年) 6月に公表されたUSPTOの予備審査指針 (Preliminary Examination Instructions)について簡単に説明させていただきたい。ここでいう予備審査とは、102条 (新規性) や103条 (非自明性) 要件を審査する前段階の予備的な審査と解される。

最初に、米国では、法文 (35U.S.C. § 101) の解釈として、古くから判例によって確立されきた大原則がある。すなわち、特許の対象になる発明は、(1)プロセス(方法:process)、(2)装置(machine)、(4)製造物(生産物:manufacture)、(4)組成物の何れかのカテゴリーに属していなければならない。さらに、形式的にこれら4つのカテゴリーに属するものであっても、以下、法上の3つの例外 (juridical exception) に該当する場合、101条の要件を満たしたことならない。

法上の3つの例外とは、具体的には以下のものを指す。

(i) 自然法則 (laws of nature)
(ii) 自然現象 (natural phenomina)
(iii) 抽象的な概念 (abstract idea)

(A)今回の予備審査指針公表前、USPTOは、特にクレームの構成要素が (i) 自然法則 (laws of nature)に該当するかという判断に際しては、Alice v. CLS Bank事件に先立つMayo v. Prometeus 事件 (2011年最高裁判決)の裁判所見解に即した審査基準を採用してきた。その一方、クレームの構成要素が(iii) 抽象的な概念 (abstract idea) に該当するか否かの判断に際しては、Bilski v. Kappos 事件 (2010年最高裁判決)裁判所見解に即した一定の審査基準を採用してきた。

今回公表された予備審査指針によれば、これまでと異なる点として、Alice v. CLS Bank事件における裁判所の見解を踏まえ、クレームの構成要素が、上記法上の3つの例外、すなわち、(i) 自然法則 (laws of nature)、(ii) 自然現象 (natural phenomena)、及び (iii) 抽象的な概念 (abstract idea)の何れに該当するか否かの判断を行うに場合にも、同一の判断基準が採用される。

(B)さらに、これまでUSPTOは、特にクレームの構成要素が(iii) 抽象的な概念 (abstract idea)であるか否かの判断に際し、クレーム発明が(1)プロセス(方法:process)であるか、(2)装置(machine)であるかによって、異なる判断基準を採用してきた。これはどういう事かと言えば、Bilski v. Kappos 事件で問題となったクレームは(1)プロセス(方法:process)のみであったため、同Bilski v. Kappos 事件における裁判所の見解は、(1)プロセス(方法:process)に関するクレーム発明の判断基準にのみ、反映されていたのである。

ところが、Alice v. CLS Bank事件 において、裁判所は、全ての発明のカテゴリーに対し、同一の判断基準を採用すべきであると、その立場を明確にした為、今回の予備審査指針では、同Alice v. CLS Bank事件の裁判所判断に従い、発明のカテゴリーによらない判断基準の統一を図ったわけだ。

この考え方は、ソフトウエア関連発明の特許を取得を目指す出願人又はこの種の発明に関する特許を保有する特許権者にとって、相当にショッキングなものだ。特に(1)プロセス(方法:process)と(2)装置(machine)とで、(iii) 抽象的な概念 (abstract idea)であるか否かの判断に際し同一の基準を採用するという事になれば、特許取得が可能なソフトウエア関連発明は、そのコンテンツが極めて限られたものになる懸念がある。。。と私には思える。

次回、予備審査指針の具体的な内容を説明する。

(次回に続く)

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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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