新事務所“Nakanishi IP Associates, LLC”開設のお知らせ(完全日本語対応によるきめ細やかなサービスで米国における強い特許の取得をお手伝い致します。)前回の続きで、特許期間の調整(Patent Term Adjustment: PTA)に関する最近の判例の話です。
EXELIXIS, INC. v. KAPPOS, Case No. 1:12cv96 (E.D. Va. November 1, 2012)さて、本事件では、B Delay (B 遅延)(特許庁の責任による遅延)と、継続審査請求(RCE)に要した期間の差し引き分(出願人の責任による遅延)との関係が問題になった。
前回説明したように、B Delay (B 遅延)とは、「USPTOは出願から3年以内に特許許可の通知を発行する」という原則の期日からの遅延(35 U.S.C. § 154(b), 37 CFR 1.702(b), 1.703(b))である。
一方、このB Delay B 遅延がRCEに一部起因するような場合、当該RCE理由による遅延分は調整(延長期間)から差し引かれるという規定がある(35 U.S.C. § 154(b)(1)(B)(i), 37 CFR 1.702(b)(1)-(5))。
例えば、出願から特許の発行までに3年6ヶ月を要したが、6ヶ月がB Delay (B 遅延)として計算されるが、RCEに4ヶ月を要していた場合、B Delay (B 遅延)の6月からRCEに要した4ヶ月を差し引き、結果として、調整期間は2ヶ月という事になる。
では、RCEを請求した時点で、既に出願から3年以上が経過していた場合はどうなるのかというのが今回の争点だった。
これまで米国特許庁(USPTO)は、RCEの請求のタイミングが出願から3年以前であろうが3年以降であろうが、その事には関係なく、B Delay (B 遅延)からRCEに要した期間を差し引くという計算方法を採用していた。
しかし、上記35 U.S.C. § 154(b)(1)(B)(i)の規定は、B Delay (B 遅延)の理由が(一部)RCEによる場合、RCEによる遅延分はB Delay (B 遅延)から差し引くという趣旨のものなので、出願から3年が経過した後に請求したRCEの期間をB Delay (B 遅延)から差し引くのはおかしいと、出願人(特許権者)側が訴えたのだ。
結果として、裁判所(バージニア東部地区裁判所)は、出願人(特許権者)側の主張を認め、「出願から3年が経過した後に請求したRCEの期間は、特許調整期間から差し引き分として考慮すべきでない」と結論づけた。
今後、「RCEに要した期間がB Delay (B 遅延)に影響を及ぼすのは、あくまでも、出願から3年以内の期間に限られる。」という運用になるはずである。
「出願から3年が経過した後にRCEを請求する」或いは「出願から3年の期間を越えた時点でRCEが庁に係属している」という状況は、出願・中間処理実務では普通にある事で、また、RCEの期間に例えば半年、或いはそれ以上の期間を費やす事も珍しくないので、今回の判決は、特に製薬会社等、少しでも特許の存続期間の終期を延長したい出願人(特許権者)にとっては、結構な朗報と言えるだろう。
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