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米国カリフォルニア州で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が、日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

AIA:2012年9月16日の施行開始分についての留意点

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改正米国特許法(Leahy-Smith Amenrica Inventions Act)の2012年9月16日の施行開始分について、出願人適格や宣誓書/宣言書等の署名書類の提出要件について、重要と思われるポイントをまとめてみた。

(具体的な手続きについては、現場の米国代理人が対応すべきものであり、依頼人側(日本の企業知財部や特許事務所)としては、米国代理人の助言、提供書類等をもとに対応されるのが好ましいと思いますが、今後の米国出願管理の方針決定等の一助になれば幸いです。)

【適用基準】
出願日が2012年9月16日以降の米国出願(分割出願、継続出願を含む)が新ルールの適用対象になる。PCT米国国内移行出願については、国際出願日が基準となる。但し、PCTバイパス出願は継続出願の一種である為、実際の米国出願日(移行日)が基準となる。また、パリ優先権主張を伴う米国出願についても実際の米国出願日が基準となる。

【出願人適格】
発明者又は発明の譲受人(法人も可)が出願人となれる。

【宣誓書/宣言書、譲渡証、米国代理人に対する委任状(署名書類)】
もし譲受人(例えば会社)が存在し、尚且つ発明者が出願人となる場合には、(改正前と同様に)譲受人は、37CFR3.73に基づく陳述書(statement)を提出する事により、発明者による出願手続きへの介入を阻止する事ができる。

一方、同じく会社等の譲受人(例えば会社)が存在し、同譲受人が出願人となる場合、米国代理人への委任は(委任状の署名は)、譲受人によるものでなければならない(発明者による委任は不可)。また、37CFR3.73に基づく陳述書(statement)の提出は不要で、(自動的に)発明者による出願手続きへの介入は阻止される。

また、宣誓書/提出期間が大幅に延長⇒特許許可通知(Notice of Allowance)の発行まで提出可能となる。
但し、出願後、時間が経過すると社内の組織変更や発明者の退職等、種々の事情で発明者から署名を入手し難くなる状況も生じ得るので、宣誓書/宣言書は、出願時又は出願後速やかに提出する方が無難である事は言うまでもないと思う。

なお、米国特許商標庁(USPTO)は、今回の改正法及びこれに伴う施行規則改定の趣旨として、手続きの簡略化及び柔軟化を掲げており、実際、例えば宣誓書/宣言書で宣誓又は宣言すべき事項の要件として、宣誓書/宣言書の内容としては、改正前に課されていた要件が改正後に課される要件を全てカバーしている事になっている。ではあるが、今回改正法のうち、2012年9月16日に施行開始分について開催された説明会等を通じ、USPTOは、
2012年9月16日以降の米国出願については、これまでUSPTOから配布されていた旧フォーマットの宣誓書/宣言書の使用を認めず、新フォーマットの使用を義務づけるという立場を明確にしている。これに違反すると、例えばNotice of Deficient Declaration/Oath (宣誓書/宣言書不備通知)を発行し、書面の出し直しを促すという事になっているようだ(説明会でのUSPTO担当者の説明による)。

上述のように、新ルールの適用対象となる9月16日以降の米国出願というのは、通常の非仮特許出願、継続出願、分割出願の場合は実際の米国出願日、PCT米国国内出願の場合は国際出願日、PCTバイパス出願やパリ優先権を伴う米国出願の場合は実際の米国出願日が基準となる。

【出願データシート(ADS)】
改正前、出願データシート(Application Data Sheet: ADS)の提出は任意であったが、改正後は、米国出願が外国出願又は国内出願からの優先権主張を伴う場合(継続出願や分割出願もこの類の出願)、出願時におけるADSの提出は必須となる。

さらに、出願が、発明者本人ではなく、譲受人による場合にも、出願時におけるADSの提出は必須となる。

【代替供述書(Substitute Statement)】
以下の場合、代替供述書(Substitute Statement)の提出により、宣誓書/宣言書の提出に替える事ができる。

–発明者が死亡した場合。
–発明者が法的に無能力である場合。
–十分に手を尽くしたにも関わらず、発明者の行方がわからず、連絡を取ることができない場合。
–発明者が当該発明を譲渡する義務を負っているにも関わらず、署名を拒んだ場合。

【宣誓書/宣言書等不備の救済措置】
原則、宣誓書/宣言書又は代替供述書の不備が原因で、特許が無効になったり行使不能になる事はない。⇒特許発行後でも手当が可能(改正米国特許法35U.S.C. 115(h)(3): Saving Clause)

参考資料:
Leahy-Smith Amenrica Inventions Act(AIA): Section 4
AIA Roadshow Slide (USPTO説明会資料)
改正米国特許法(35U.S.C. 115-118)
USPTOの新ルール対応済み各種書面フォーマット集

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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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