新事務所“Nakanishi IP Associates, LLC”開設のお知らせ(完全日本語対応によるきめ細やかなサービスで米国における強い特許の取得をお手伝い致します。)米国特許出願に含まれる明細書等(クレームを含む)は、審査に供される際には英語で書かれていなけばならないが、仮出願、通常の出願、共に、出願時には、外国語(例えば日本語)で書かれたものを提出し、後から英訳を提出することができる。また、パリ条約上の優先権を主張する出願、PCTに基づく国内移行出願については、基礎出願の明細書等は外国語で書かれていることがほとんどだろう。この場合、英語で書かれた明細書等に誤訳があった場合、修正はできるだろうか。
先ず、米国の特許法及び関連規則には、誤訳訂正書という概念はなく、誤訳の訂正は補正で対応するしかない。そして、誤訳に訂正に当たる補正が果たして可能なのかという点については、出願の種類により、分けて検討する必要がある。
(1)米国において、日本語で書かれた明細書を直接米国出願として提出し、その後、英文翻訳を提出した場合、誤訳の訂正は認められる。これ については、
MPEP2163.07 (最終段落)に、以下のような明確な規定がある。
“Where a U.S. application as originally filed was in a non-English language and an English translation thereof was subsequently submitted pursuant to 37 CFR 1.52(d), if there is an error in the English translation, applicant may rely on the disclosure of the originally filed non-English language U.S. application to support correction of an error in the English translation document.”
ここで言う"U.S. Application"(原文に相当)には、当然継続出願の親出願も含まれるし、PCTに基づく米国国内移行出願の基礎、つまり国際特許出願も含まれる。
(2)一方、日本出願等、外国でなされた特許出願(国際出願を除く)を基礎としてパリ条約に基づく優先権を主張して米国出願(英語)を行った場合はどうか。これについては、実際のところ、誤訳の訂正を認める明確な規定はない。それどころか、以下の通り、外国でなされた基礎出願の内容を根拠にした補正は認められないという規定がある。
"Where a foreign priority document under 35 U.S.C. 119 is of record in the U.S. application file, applicant may not rely on the disclosure of that document to support correction of an error in the pending U.S. application." (同じく
MPEP2163.07)
が、これには例外的な取り扱いの規定が存在する。外国の出願に基づく優先権主張を適正に行った米国出願においては、不注意による欠落部分(例えば訳抜け)につ いては、先の外国出願が参照文献として援用された(incorporation by reference)ものとみなされ、訳抜けの補充が認められる(
37 CFR 1.57(a),
MPEP 201.17)。
しかし、上記例外的な取り扱いの規定も、あくまで「訳抜けの補充」を認めるというものにすぎず、誤訳を認めると明確に規定しているわけではない。
では、実際のところ、誤訳の場合はどうなのかというと、過去、日本の基礎出願に基づく米国出願において、クレームに含まれていた重大な誤訳を再発行出願によって修正しようとした特許権者と、これを認めなかった米国特許商標庁(USPTO)とが争った判例がある。結論として、裁判所は、外国の基礎出願に基づく誤訳を認めるべきという判決を下している(In re Oda事件(CCPA1971))。この事件において、裁判所は、「発明者が、本来、どのような発明を意図していたのかが重要なのであって、これが誤 訳でゆがめられたような場合、それを後から修正する事は認められるべき。」といった趣旨の見解を示している。つまり、特許庁側のルール(施行規則や審査便覧)に照らしてこれを認める根拠があるかどうかは微妙なのだが、判例によれば認められる事になっている、というのが実際のところ、、、と思われる。
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