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米国カリフォルニア州で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が、日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

MPEP改定(第9版) ミーンズプラスファンクションクレームの認定基準への影響 (2)

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前回のMPEP改定の話、詳しくはMPEP2181におけるミーンズプラスファンクションクレームの認定条件に関する話の続きです。以下、あくまでも私の個人的な見解、というか考察であり、規定に対する解釈が間違っている可能性もあるの予めご了承ください。或は、ケースバイケースであり、事例ごとに裁判所で判断されるような微妙な問題かもしれません。

前回説明したように、MPEPには、審査官が対象となるクレーム要素をミーンズプラスファンクションと認定するための3つの認定条件(必要十分条件)が規定されている。

今回着目するのは、その一つ、「“means for”、“step for”、又は一般的な代用語が特定の機能を達成するために十分な構造、材料、又は動作を伴っていないこと」(MPEP改定後)、という条件である。

ちなみに、改定前においては、「“means for”、“step for”、又は 非構造用語のフレーズが特定の機能を達成するために十分な構造、材料、又は動作を伴っていないこと」と規定されており、改定前後で実質的に大きな変更はない。

ここでは、対象となるクレーム要素、すなわち(1)“means for”、(2)“step for”、又は(3)一般的な代用語(非構造用語)が、(i) 十分な構造(structure)、(ii)材料(material)、又は(iii)動作(act)を伴っていない場合、(他の要件を満たすことを条件として)審査官は、対象となるクレーム要素をミーンズプラスファンクション又はステッププラスファンクションと認定する、と言っているわけだ。

言い換えれば、(1)“means for”、(2)“step for”、又は(3)一般的な代用語(非構造用語)が、(i) 十分な構造(structure)、(ii)材料(material)、又は(iii)動作(act)を伴っている場合、審査官は、対象となるクレーム要素をミーンズプラスファンクション又はステッププラスファンクションと認定できない、と言うことになる。

ここで、 (3) 一般的な代用語(非構造用語)というのが、(1)“means for”及び(2)“step for”の双方の代用語を指しているのは明らかである。

従って、上記の文節において、(1)“means for”、(2)“step for”、及び(3)一般的な代用語(非構造用語)という3つの主語は、(i) 十分な構造(structure)、(ii)材料(material)、及び(iii)動作(act)という3つの目的語に対し、各々が一対一で対応しているのではなく、三対三で対応していると解釈して良いのではないかと思う。文脈上そう解釈せざるを得ない。

そうすると、特に、(1)“means for”又は(3)その代用語(例えばa unit for)が、(iii)動作(act)を伴っている場合、審査官は、対象となる用語をミーンズプラスファンクションと認定することはできない、という理屈になる。

例えば、以下のような例が考えられる。

クレームの構成要素として、金属を加熱するための手段(means for heating metal)、又は金属を加熱するためのユニット(a unit for heating metal)という表現では、上記ミーンズプラスファンクションと認定される条件を満たすことになるだろう。

しかし、下記のような限定をつければどうだろう。

「金属を加熱するために赤外線を発生する手段(means that generates infrared light, for heating metal)又は金属を加熱するために赤外線を発生するユニット(a unit that generates infrared light, for heating metal)」

つまり、「当該手段(又はユニット)は、金属を加熱するという機能(function)を達成する為に、赤外線を発生するという動作(act)を行う」という趣旨である。

もっとも、”means for”という表現は、それを使うだけで対象となるクレーム要素がミーンズプラスファンクションであるという強力な推定を働かせるので、この表現は避け、金属を加熱するために赤外線を発生するユニット(a unit that generates infrared light, for heating metal)という表現を用いるのが適切であるとは思うが。

何はともあれ、少なくとも、金属を加熱するために赤外線を発生するユニット(a unit that generates infrared light, for heating metal)のような表現に対し、審査官がこれをミーンズプラスファンクションと認定する根拠は見当たらないように思う。もちろん、裁判所はまた違った見解を示すのかもしれないが。

実際、例えば112条(f)項(pre-AIA 112条第6段落)の規定からも明らかなように、米国特許法上、機能(function)と動作(act)は明確に区別されており、特に方法クレームにおいては、特定の機能を達成するための動作(作用や工程と言ってもよいと思う)を示すことにより、ステッププラスファンクションの認定を免れると明確に判じたケースも少なくない(例えば O.I. Corp. v. Tekmar Co.(CAFC (1997))。

クレームドラフティングにおいてミーンズプラスファンクションの認定を免れる方策としては、構造的な特徴を明記するという方策に目が向きがちだが、上記のように、一つのクレーム要素について、機能と動作の二段階構成を採用するというやり方も、一考に値するかもしれない。

但し、少なくとも米国のプラクティスにおいて、装置クレームは構成要素の構造的な特徴によって先行技術との差異を明確するのが王道であり、その機能に特徴を有する発明については方法クレームで権利化を図るのが米国法の意図である。。。ような気がする(それが特許法の正しいあり方と個人的には思わないが)。この事は、私見としてこれまでも何度か述べた通りである。

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MPEP改定(第9版) ミーンズプラスファンクションクレームの認定基準への影響 (1)

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タイトルほど大それた内容の記事ではありませんので悪しからず。

米国特許出願における最近の審査の動向等について、所内の弁護士やエージェントから、情報提供のメールが配信されることがしばしばある。

先ごろ、以下のような興味深い情報の配信があった。

つい先月、MPEP(米国特許審査便覧)の改定(第9版の発行)があったが、早速、改定版の内容を反映したと思われる記述が、オフィスアクション(拒絶理由通知)に含まれていたというものだ。

MPEP(第9版)の該当箇所はこちら

「ミーンズプラスファンクション」 クレームについては、これまでも何度か説明したことがある。以下の通り、簡単におさらいする。

(1) 35 U.S.C. 112(f) 又は pre-AIA 35 U.S.C. 112第6段落に規定の、いわゆる「ミーンズプラスファンクション」 と認定されたクレーム要素については、権利行使のみならず、特許有効性(明細書記載要件)を判断する上で、特許権者に著しく不利な解釈がなされれしまう。
(2) クレーム中において、"means for..."という表現を使用すると、そのクレーム要素がミーンズプラスファンクションという強力な推定が働き、出願人又は特許権者の側が、反証の義務を負うことになってしまう。
(3) たとえ"means for..."という表現を使用していなくても、特段の構造的な意味合いを持たない用語について、その具体的な構造を示すことなく機能のみと組み合わせたもの、例えば、加熱部材(a member for heating)等もミーンズプラスファンクションと認められる。

MPEPでは、実際の特許出願において審査官がクレームの構成要素をミーンズプラスファンクションと認定するための十分条件として、一応の基準を示しているが(MPEP2181)、その内容が、改定前と改定後で、以下のように微妙に異なる。

---------------------------------------
[改定前]
(A) the claim limitation uses the phrase “means for” or “step for” or a non-structural term (a term that is simply a substitute for the term “means for”);
(B) the phrase “means for” or “step for”or the non-structural term must be modified by functional language; and
(C) the phrase “means for” or “step for”or the non-structural term must not be modified by sufficient structure, material, or acts for achieving the specified function.
(日本語訳)
(A) 対象となるクレームの構成要素に、“means for”、“step for”、又は 非構造用語(単に、"means"(手段)という言葉を他の言葉に置き換えたもの)のうち何れかのフレーズが使われていること、
(B) 当該“means for”、“step for”、又は 非構造用語のフレーズが機能を示す言葉による修飾を伴うこと、そして、
(C) 当該“means for”、“step for”、又は 非構造用語のフレーズが特定の機能を達成するために十分な構造、材料、又は動作(作用)を伴っていないこと。

[改定後]
(A) the claim limitation uses the term “means” or “step” or a term used as a substitute for “means” that is a generic placeholder (also called a nonce term or a non-structural term having no specific structural meaning) for performing the claimed function;
(B) the term “means” or “step” or the generic placeholder is modified by functional language, typically, but not always linked by the transition word “for” (e.g., “means for”) or another linking word or phrase, such as "configured to" or "so that"; and
(C) the term “means” or “step” or the generic placeholder is not modified by sufficient structure, material, or acts for performing the claimed function.
(日本語訳)
(A) 対象となるクレームの構成要素に、“means for”、“step for”、又は 一般的な代用語(generic placeholder)である"means"(手段)代えて用いられる他の用語(特定の構造の意味合いをもたない場当たり的な用語又は非構造用語)が使われていること、
(B) 当該“means for”、“step for”、又は一般的な代用語が機能を示す言葉、必ずしもそうとは限らないが典型的な例としては、連結語としての"for"(例えば"means for"などとして使われるもの)や、その他"configured to"、"so that"のような連結句や節による修飾を伴うこと、
(C) 当該“means for”、“step for”、又は一般的な代用語が特定の機能を達成するために十分な構造、材料、又は動作(作用)を伴っていないこと。
---------------------------------------

(A)、(B)、(C)、3つの条件を全て満たす場合、審査官は対象となるクレームの構成要素をミーンズプラスファンクションと認定するという点において、改定前後で変わりはない。

また、先述したように、(2) クレーム中において、"means for..."という表現を使用すると、そのクレーム要素がミーンズプラスファンクションであるという推定が働くこと、また、 たとえ"means for..."という表現を使用していなくても、特段の構造的な意味合いを持たない用語について、その具体的な構造を示すことなく機能のみと組み合わせたもの等もミーンズプラスファンクションと認められる、という基本的な考え方も改定前後で変わらない。

今回、両者の違いとして注目したいのは、条件(B)"means for"、"step for"に準ずる表現(“means for”、“step for”の代用語と言ってもよいかもしれない)の具体例として、"configured to"及び"so that"を挙げていることだ。

ご存じの方も多いと思うが、例えば、"configured to"という用語は、日本の基礎出願においてクレームに~手段と表現されている構成要素について、ミーンズプラスファンクションと認定されることを回避するため、日米の実務者が、ある意味苦し紛れにしばしば用いてきた定番用語の一つである。もっとも、以前から、このような表現を用いても、審査官次第で或は前後の文脈次第、ケースバイケースで、ミーンズプラスファンクションと認定されたりされなかったりと、その解釈はかなり不安定で、決して確定的なものではなかった。

それが、今回の改定により、USPTOとして、「もともとmeans for...として構成要素の機能のみ表現したものを、特定の構造の意味合いを持たない用語にconfigured to...を組み合わせた表現に修正しても、ミーンズプラスファンクションの認定を免れることはできませんよ。」という考え方、或は、判断の姿勢を明確にしたと受け取れるのだ。

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クレームの構成要素 -Non-Structural Term-

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クレームの構成要素がいわゆるミーンズプラスファンクション又はステッププラスファンクション(35U.S.C.112, sixth paragraph (改正法(AIA) 35U.S.C.112(f))に規定される ”means plus function” 又は ”step plus function”)に該当すると認定されてしまうと、当該構成要素の解釈が明細書に例示された具体的な構造物や工程に限定されてしまうばかりでなく、明細書やクレームの記載要件(35U.S.C.112, first and second paragraphs (改正法(AIA) 35U.S.C.112(a), (b)))として、通常よりも厳しい基準が採用され、出願人(特許権者)として不利になる事は、これまで何度か説明した通りである。

クレームの構成要素がミーンズプラスファンクション又はステッププラスファンクションに該当するか否かについては、過去の判例から、ある程度の判断基準が確立されている。

先ず、クレーム中において、”means for…” 又は ”step for…” という表現が、何らかの機能を示す表現と共に使われている場合、それらはミーンズプラスファンクション又はステッププラスファンクション要素であるという推定が働く。

但し、そのような推定が働く場合でも、出願人(特許権者)側として、当該要素が、その機能を達成するために必要な構造(を示す表現)をさらに含んでいるという主張を通すことができれば、その推定は覆される(当該要素はミーンズプラスファンクション又はステッププラスファンクション要素でないと認められる)。

ここからが今回の本題。

クレーム中において、”means for…” 又は ”step for…” という表現が使われていなくても、(1)非構造的な用語(“non-structural term”)が単に”means for…” 又は ”step for…”を代替して使用されており、(2)機能的な言葉によって修飾されており(特定の機能を達成するためのものとして表現されているという事)、且つ、(3)そのような機能を達成するための具体的な構造を伴っていない場合、審査官は、その用語をミーンズプラスファンクション要素であると判断する。

ここで言う非構造的な用語(“non-structural term”)としては、以下のものが挙げられる。

“module for,” “device for,” “unit for,” “component for,” “element for,” “member for,” “apparatus for,” “machine for,” or “system for”

(判例(Welker Bearing Co., v. PHD, Inc., 550 F.3d 1090, 1096 (Fed. Cir. 2008); Massachusetts Inst. of Tech. v. Abacus Software, 462 F.3d 1344, 1354 (Fed. Cir. 2006); Personalized Media, 161 F.3d at 704; Mas-Hamilton Group v. LaGard, Inc., 156 F.3d 1206, 1214-1215 (Fed. Cir. 1998))及びMPEP2181より引用)

ここで注意したいのは、判例によると、ディバイス、ユニット、部材等、一見構造を示すように感じる用語も、非構造的な用語 (“non-structural term”)のカテゴリーに入っている。

逆に、構造的な用語(“structural term”)として市民権を得ているものとして代表的なものに、回路 “circuitry” という用語がある(MIT v. Abacus Software (Fed. Cir. 2006))。

もちろん、非構造的な用語(“non-structural term”)を用いたからと言って、即、それがミーンズプラスファンクション又はステッププラスファンクション要素であると決めつけられるわけではなく、上記(1)~(3)の条件から判断される。

結局、クレームの構成要素の記載として、それがミーンズプラスファンクション又はステッププラスファンクション要素と判断されないようにする為には、各構成要素に、何らかの形(表現)で構造的な特徴や構造を想起させる表現が伴う事が必要と思われる。

言うは易し行うは難しであるが。。。

特に、ソフトウエアに関連する発明、特にソフトウエア部分に特徴のある装置クレームに至っては、理屈の上で、ほとんど不可能に近い気もする。経験上、明細書の説明や当業者の常識を引っ張り出す等、色々と屁理屈をこねて審査官を煙にまける場合もあるという印象がなくもない。

ただ、少なくとも、ソフトウエア関連発明について、潰され難い強い特許を取得するという立場で考えると、「プロセス」又は「プロセスを実行するプログラムを含んだ媒体」がクレームの表現形式としては最も無難であり、これらの形式を少なくともクレームに含めておくべき形式であるように思う。言い方を変えれば、装置クレームだけという選択はかなり危険という事になる。

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ミーンズプラスファンクションクレーム(明細書開示条件の落とし穴)

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今回は、先日(1/20)のセミナーで取り上げた課題の一つ、「ミーンズプラスファンクションクレームと認定されたクレームにかかる特許が112条違反で無効にされた事例」として、前回とは別の角度から見て重要であると思われる他の事例を紹介させていただきたい。

クレーム要素がミーンズプラスファンクションと認定された場合には、明細書の開示要件として、『当該クレーム要素の実現が可能な程度の開示』では許されなくなるという見解を裁判所がはっきり示したわかりやすい事例の一つと思う。

Blackboard v. Desire2Learn 事件 (Fed. Cir. 2009)


本件は、「コース管理ソフトを利用することによってインターネットを通じた生徒と教師とのやり取りを可能にした教育システムのサービス」を提供するBlackboard社が、自社の保有する特許権を侵害しているとして、Desire2Learn社に対し訴えを提起した事件である。

以下、問題となった特許(U.S. Patent No . 6,988,138)の代表的なクレームを示す(赤字の箇所が重要)

1. A course-based system for providing to an educational community of users access to a plurality of online courses, comprising:
a) a plurality of user computers, with each user computer being associated with a user of the system and with each user being capable of having predefined characteristics indicative of multiple predetermined roles in the system, each role providing a level of access to a plurality of data files associated with a particular course and a level of control over the data files associated with the course with the multiple predetermined user roles comprising at least two user's predetermined roles selected from the group consisting of a student role in one or more course associated with a student user, an instructor role in one or more courses associated with an instructor user and an administrator role associated with an administrator user, and
b) a server computer in communication with each of the user computers over a network, the server computer comprising:
means for storing a plurality of data files associated with a course,
means for assigning a level of access to and control of each data file based on a user of the system's predetermined role in a course;
means for determining whether access to a data file associated with the course is authorized;
means for allowing access to and control of the data file associated with the course if authorization is granted based on the access level of the user of the system.

以下、クレームの日本語訳である。

1.一群のユーザーが教育目的で複数のオンラインコースにアクセスできるようにするためのコース提供用のシステムにおいて、
a )複数のユーザーコンピュータ(端末)であって、各々が、当該システムと関連して、且つ、各ユーザーが当該システムにおいて予め設定された複数の役割を示すよう予め設定された特徴を持つ端末であり、前記各末端の役割(2つのレベル(地位)を与える役割)は、
(1) 特定のコースに関連する複数のデータファイルにアクセスするレベルと、
(2) *学生であるユーザーに関連する一つ又はそれ以上のコースにおける一学生としての役割、
* インストラクターであるユーザーに関連する一つ又はそれ以上のコースにおける一インストラクターとしての役割、及び
* 管理者であるユーザーに関連する一管理者としての役割、
からなるグループから選択された少なくとも二つ以上の予め設定された役割を含む、予め決められた複数のユーザーの役割が設定された、コースに関連するデータファイルを制御するレベルとを、
を与えるように構成された複数の末端と、
b) ネットワークを通じて各ユーザーコンピュータと通信可能なサーバーコンピュータであって、
所定のコースに関連のある複数のデータファイルを保管する手段、
所定のコースにおいて予め設定された役割を持つユーザーによる各データファイルへのアクセス及び制御のレベルを与える手段
そのコースに関連するデータファイルへのアクセスの権限が与えられているか否かを判断する手段、及び
当該システムのユーザーのアクセスレベルに基づき権限が認められる場合、コースに関連するデータファイルへのアクセス及び制御を許可する手段を備えるサーバーコンピュータと、
を備えるシステム。

裁 判所は、クレームの構成要素である“means for assigning a level of access to and control…”(アクセスと制御のためのレベル(地位)を与える手段について、これを特許法第112条第6段落に規定する「ミーンズ・プラス・ファンクション」であると認定した上で、明細書中においてこれらクレームの構成要素に対応する構造の十分な説明が欠如しているという理由で、特許法112条第2段落違反(クレームに記載された発明が不明確)を根拠に当該特許を無効と判断した。

(ポイント)
112条第2段落違反を理由に当該特許は無効であると主張するDesire2Learn社(被告)に対し、Blackbord社(原告)は、明細書中で説明されている「ソフトウエアに含まれるaccess control manager」 という機能(ロジック)が、問題となった手段の機能を担っている と反論した。

実際、明細書中の実施例の説明には、「“access control manager”は、サブシステムの要求に応じ、アクセスコントロールリストを作成する。アクセスコントロールリストに応じ、保護される(アクセス制限のかかる)リソースが決まっている。アクセス制限には、複数のレベルがある。」等、問題となったクレーム要素(ミーンズプラスファンクション)に対応する“access control manager”の機能や役割について、かなり詳細な説明がなされたいた。また、同明細書中には、アクセス制限のレベルによって、どのような制御が制限されるのか、具体例も挙げられていた。

にもかかわらず、裁判所は、ミーンズプラスファンクションのクレーム要素をサポートする具体例としては、明細書中の説明では不十分であると判断した。


前回、Automotive Technologies International v. BMW 事件 (Fed. Cir. 2007)の説明で強調したように、米国においては、クレー ムの構成要素が112条第6段落に規定された「ミーンズプラスファンクション」に該当すると認定されると、必然的に、明細書の開示要件として、通常のク レーム構成要素よりも厳しい条件が課される。

つまり、Automotive Technologies International v. BMW 事件 (Fed. Cir. 2007)と同様、本件の場合もまた、上記クレームの構成要素がもし「ミーンズプラスファンクション」と認定されなければ、当該特許は無効にならなかった可能性が極めて高いと言える。

ちょっと乱暴な要約になってしまうが、本件について、裁判所は概ね以下のような見解を示している。

「ミーンズプラスファンクションのクレーム要素というのは、クレーム中に当該要素の機能についてしか記載していないのだから、これに対応する構造(構成)、つまり、当該機能を実現するための構成(本件では、恐らく“access control manager”が実行する具体的な処理手順と思う)が明細書によって十分説明されていなければならない。

そして、本件のように当該クレーム要素(の機能)が特定のプログラム(の機能)に関連する場合、明細書の開示条件としては、当業者(例えばソフトウエア開発者)が明細者を読んだ際、何らかの方法で当該機能を実現するプログラムを作成できる程度の開示では不十分。

当業者から見て、『当該クレーム要素の実現が可能な程度の開示』ではダメで、『その実現を可能にする数あるプログラムのロジックの選択肢の中から、発明者は具体的にどの選択肢を選んだのか』、まで明細書で特定することで、はじめて112条第2段落の要件を満たすことになる。」

ちなみに、上記のような裁判所の見解は、本事件に限ったものではない。ミーンズプラスファンクションのクレーム要素を含むソフトウエア関連発明の特許が112条第2段落違反で無効となったいくつかの事件において、裁判所は、ほぼ同様の見解を示している。

前回紹介したAutomotive Technologies International v. BMW 事件 (Fed. Cir. 2007)と同様、本件もまた、クレー ムの構成要素が112条第6段落に規定された「ミーンズプラスファンクション」に該当すると認定されると、必然的に、明細書の開示要件として、通常のク レーム構成要素よりも厳しい条件が課される事を、教訓として実感させられる事件だ。

前回と同様、クレームの構成要素として「ミーンズプラスファンクション」を採用する場合、明細書や図面の記載に細心の注意を払う必要があることを実感させられる一つの具体例として、本事件を紹介した次第。


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ミーンズプラスファンクションクレーム(複数の実施例を記載した場合の落とし穴)

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前回の記事で紹介した「ミーンズプラスファンクションクレームと認定されたクレームにかかる特許が112条違反で無効にされた事例」について、セミナーに参加されなかった方々の為に事件の概要をもう少し詳しく説明したいと思う。

Automotive Technologies International v. BMW 事件 (Fed. Cir. 2007)

本件は、車両の側面衝突を検知するセンサの発明についての特許権を保有するAutomotive Technologies International(ATI)社が、BMW社等の自動車メーカーに対し特許権侵害の訴えを提起した事件である。

以下、問題となった特許(U.S. Patent No. 5,231,253)の代表的なクレームを示す。

1. A side impact crash sensor for a vehicle having front and rear wheels, said sensor comprising:
(a) a housing;
(b) a mass within said housing movable relative to said housing in response to accelerations of said housing;
(c) means responsive to the motion of said mass upon acceleration of said housing in excess of a predetermined threshold value, for initiating an occupant protection apparatus; and
(d) means for mounting said housing onto at least one of a side door of the vehicle and a side of the vehicle between the centers of the front and rear wheels, in such a position and a direction as to sense an impact into the side of said vehicle.

以下、クレームの日本語訳である。

1.前輪及び後輪を備えた車両の側面衝突衝撃センサであって、
(a) ハウジングと、
(b) 前記ハウジング内において、前記ハウジングの加速に反応して前記ハウジングに対し相対的に移動可能な質量と、
(c) 乗員保護装置を作動させるために、予め設定されたしきい値を越えて加速する前記質量の動きに反応する手段と、
(d) 前輪の中心及び後輪の中心の間であって、前記車両のサイドドアの少なくとも一つと前記車両の側面とに配置された前記ハウジングに、前記車両の側面への衝撃を検出できる位置及び向きに取付けられた手段と
を有する側面衝突衝撃センサ。

本件において、被告側(BMW社等)は、ATI社の特許は特許法112条第1段落に規定された「実施可能要件」を満たしておらず、無効であると主張した。地裁は、この被告側の主張を認めATI社の特許を無効と判断した。連邦控訴裁判所(CAFC)も地裁の判断を支持した。

裁判所は、クレーム中の“means responsive to the motion of said mass upon acceleration of said housing in excess of a predetermined threshold value, for initiating an occupant protection apparatus”という用語を特許法112条第6段落のミーンズ・プラス・ファンクションに該当とすると判断した。この“means responsive to the motion…”「ミーンズ(手段)」に対応する実施例として、明細書本文及び図面には、クレームに記載された機能を、機械的に実現する装置(センサ)及び電子的に実現する装置(センサ)が個別に記載されていた。
これら2つの実施例について、機械的に機能を実現するセンサに関しては当業者に実施可能な程度に十分な記載がなされていたが、電子的に機能を実現するセンサについての構造及び機能の説明が不十分であった。この事実により、クレームそのものが、特許法112条第1段落に規定された「実施可能要件」を欠くものとして、無効と判断されたのである。

(ポイント)
問題となった特許において、「乗員保護装置を作動させるために、予め設定されたしきい値を越えて加速する前記質量の動きに反応する手段」に対応する「構造」として、機械的及び電気的に動作するセンサ構造が、2つの異なる実施例として明細書に記載されていた。そのうち、電気的に作動するセンサ構造が、実施可能要件を満たしていないという理由で、裁判所は、クレームにかかる特許を無効と判断したのである(112条第1段落違反)。

米国においては、クレームの構成要素が112条第6段落に規定された「ミーンズプラスファンクション」に該当すると認定されると、必然的に、明細書の開示要件として、通常のクレーム構成要素よりも厳しい条件が課される。「ミーンズプラスファンクション」の場合、当該クレームの構成要素に対応する「構造」が明細書において明確に説明されている必要があるからである。

例えば、本件の場合、上記クレームの構成要素がもし「ミーンズプラスファンクション」と認定されなければ、当該特許は無効にならなかった可能性が極めて高い。

そのような意味で、クレームの構成要素として「ミーンズプラスファンクション」を採用する場合、明細書や図面の記載に細心の注意を払う必要があることを実感させられる一つの具体例として、本事件を紹介した次第。


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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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