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米国カリフォルニア州で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が、日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

予備補正(2)

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予備補正の続き。

追加料金を避けるために、複数従属項を単数従 属項に修正したり、余分なクレームを削除(整理)する為に予備補正を行う事があるが、このような追加料金の回避目的の為の予備補正は、原則、出願と同時に 行うものでなければならないと書いたが、これには例外がある。
例えば、出願時において、宣誓書の提出が間に合わない場合や、明細書のオリジナルが日本語であって英語翻訳の準備が間に合わない場合、宣誓書なし、或いは日本語で書かれた明細書やクレームを直接提出することができる。この場合、”Notice to file Missing Parts”という、いわば足りない書面(宣誓書や翻訳文)を提出してください、という指令をUSPTOから受け取ることになるので、これに応答する形で、それら書類を補完すればよい(ただし、後出しの追加料金が必要)(MPEP601.01(a)参照)

この場合、補完が完了してはじめて出願が正式に受理されることになるため、その補完日までに予備補正を行ってクレームを調整すれば、その予備補正後のクレーム数に基づいて料金が計算される。

また、オフィスアクションに対する応答によって独立項の数が規定数(3)を越えたり、総クレーム数が規定数(20)を越えた場合には、これに応じて追加料金を支払う必要がある。

しかし逆に、オフィスアクションに対する応答(補正)によってクレーム数が減っても、既に支払った追加料金は返還されない。

ただし、補正で減少したクレーム数が再度の補正で増えて元に戻った様な場合、再度追加料金を支払う必要はない。

例えば、出願時に総クレーム数が23個あって、3個分について追加料金を支払ったが、1回目のオフィスアクションに対する応答でクレーム数を20個に減らす補正をしても、3個分の追加料金は戻ってこない。しかし、2回目のオフィスアクションに対する応答でクレーム数を再度20個から23個に増やす補正をした場合、3個分の追加料金を再度支払う必要はないということである。


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予備補正(1)

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米国特許出願の予備補正(Preliminary Amendment)は、概ね日本の出願実務でいう自発補正にあたると言って差し支えないと思う。

日本でなされた出願を基礎として米国特許出願を行う場合、予備補正を行うのは、審査対象として米国特許商標庁(USPTO) の基準に適合するようクレームや明細書の内容や形式を整えるという、決まりきったある種の儀式のようなもの、とも言えなくはない。

予備補正は、(1)出願と同時、又は、(2)出願後、最初のオフィスアクションが発行されるまでに行う事ができる。

ところで、(1)出願と同時に行う予備補正と、(2)出願後に行う予備補正とでは、手続きのとらえ方として若干の差異があることをご存知だろうか。

これに関し、出願人として知っておいた方が良いだろうと、“私が個人的に思う”事が2つある。

先ず、米国特許出願において、クレームの総数が20、独立クレームの数が3を越えると追加料金を取られ、また、複数のクレームに従属するクレーム(いわゆる複数従属項)が一つでも含まれると、これも追加料金を取られる。また、複数従属項の場合、従属元のクレームの数だけクレームが存在するものとしてクレームの総数がカウントされる。複数従属項に複数従属項を従属させることはできず、これは形式違反となる。ここで、追加料金を避けるために、複数従属項を単数従属項に修正したり、余分なクレームを削除(整理)する為に予備補正を行う事があるが、このような追加料金の回避目的の為の予備補正は、原則、出願と同時に行うものでなければならない。出願時、一旦追加分の料金を支払ってしまうと、後からクレーム数を調整しても追加料金は返還されないという意味だ。

次に、(1)出願と同時に行う予備補正では、明細書(specification)の内容について補正を行う場合、発明の名称(title)、要約 (abstract)、それから優先権主張出願の基礎出願、分割出願の親出願、国内移行出願の国際出願等、原出願や関連出願の情報を書き入れる目的以外の補正は、必ず代替明細書(substitute specification)を提出しなければならない。

なぜ、この2点が大事かと言うと、日本の出願人がこれを知らなかった為に、出願時、米国側の代理人と若干とんちんかんなやり取り、叉は、余計なやり取りが発生してしまう事もあるからだ。もちろん、大企業の知財部や外国案件の取扱を得意とする特許事務所にとっては、米国出願手続の“いろは”にすぎないと思うが、米国出願について不慣れな企業や事務所にとっては、このような、ほんの些細な手続きの知識の有無で、米国代理人との間でコミュニケーションに齟齬が生じイライラすることもあると思う。そのようなイライラ要素を少しでも減らすに越したことはないと思い挙げてみた。ちょっとした豆知識である。


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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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