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米国カリフォルニア州で特許事務所を経営する米国パテントエージェント兼日本弁理士が、日々の業務で体験した事、感じた事を綴っています。

クレーム中での形状の表現

クレーム中で構造の形状を特定したい場合、~形状を有する(has a ~shape、is ~shaped)等の表現を使う事が度々あると思います。

それ自体、ごく一般的な事であり、問題があるわけではありません。

例えば、四角形状 (squre shape)、球形状(spherical shape)等、良く使われる表現です。このような表現について、明確性要件(112条(b)項)違反の指摘を受ける事は原則ありません。これらは「幾何学的な形」としての定義があるため、形状を示す表現として問題が無いのであろうと思います。

問題になるのは、刃形状(blade shape)、フランジ形状 (flange shape)等、一概に具体的な形状が特定できない(絞り込めない)ものを、形状として定義しようとした場合で、これらは明確性要件違反になる可能性が出てきます。

このような明確性要件違反を回避、解消する手段としては、単に、刃を有する(having (comprising) a blade)とか、フランジを有する(having (comprising) a flange)のように、構造の名称として認められる物や部材そのものに置き換える表現を使う事により、明確性要件違反を指摘される可能性は格段に低くなります。物の一般名称として市民権を得ている事と、その形状について市民権を得ている事は別の話、というところでしょうか。

また、上記のような「物の名称+shape」が必ず112条(b)項違反なのか、と言えば、そうでもありません。明細書や図面から、その定義は明確であると判断されれば、そのような表現も112条(b)項要件を満たすと解釈されます。ケースバイケースで少々難しいところです。

尚、U字形状 (U shape) のように、英語圏で使用される単純な文字や記号になぞらえた形状も、それ自体、明確性要件違反になる事はまずありません。しかし、その定義が若干曖昧で広めに解釈される傾向があり、従来技術との差異を主張する場合には不利になる事もあるため(ケースバイケースですが)、注意した方が良いと思います。

shape (~形状)は、構造上の特徴を示す表現として、便利でもあり、(時折)若干の注意が必要な言葉ですね。「純粋な幾何学形状の名称+shape」なら原則として問題無し、「物の名称+shape」はケースバイケースで注意が必要、という事になるかと思います。
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101条の問題の現状 (Berkheimer v. HP, Inc事件の判決 を踏まえたUSPTOのMemorandum)

 ここ数年、ソフトウェア関連発明については、Bilski v. Kappos事件(2010)、Mayo v. Prometheus事件 (2011)、Alice Corp. v. CLS Bank事件 (2014)といった一連の最高裁判決の影響を受け、発明の適格性要件(米国特許法101条)の要件を満たす為のハードルが実質的に相当高くなっていることは周知の通りである。

 USPTOによる現行の審査実務としては、特にMayo v. Prometheus事件 やAlice Corp. v. CLS Bank事件における最高裁の見解に基づいて 確立された判断フローに基づいて、米国特許法101条に規定された特許の適格性要件 (patent eligibility) が判断されている。

 同判断フローの概略は以下の通りである。

101 Flow
(MPEP2106より引用)

 先ず、クレームに記載された発明 (クレーム発明) が、プロセス(方法)、装置、製造物、組成物、又はのこれらの改良というカテゴリーに属するか否かという判断を行う (Step 1)。Step 1での判断が「NO」なら「特許の適格性」は直ちに否定される。一方、Step 1での判断が「YES」の場合、続いて以下の判断がなされる。

Part 1 Mayo test (Step 2A)
 先ずStep 2Aにおいて、クレーム発明が、「法上の例外」 (自然法則、自然現象、または抽象概念) に関するものか否かを判断する。クレームに「法上の例外」に該当する限定が含まれるか否かの判断と言い換えても良いと思う。
 Step 2Aの判断が「NO」 (クレームが「法上の例外」に該当する限定を含まない) であれば、直ちに、「特許の適格性有り」と判断される。一方、Step 2Aの判断が「YES」 (クレームは「法上の例外」に該当する限定を含む) であれば、次の判断 (Step 2B) に移る。

Part 2 Mayo test (Step 2B)
 Step 2Bにおいては、クレームが「法上の例外」に該当する限定の他、追加の限定として、「有意な構成要素」(additional elements significant more than the judicial exception)を含んでいるか否かを判断する。Step 2Bにおける判断が「YES」なら「特許の適格性有り」、「NO」なら「特許の適格性無し」という最終判断に至る。


 ここからが本題です。

 Berkheimer v. HP, Inc事件の判決 (Fed. Cir. February 6, 2018)を受け、USPTOによる上記判断フローの運用、特に「ソフトウェア関連発明」の101条要件判断が若干の変更された。曖昧な部分が少し明確になったと言った方が正確かもしれない。

 この若干の変更は、出願人側が101条要件の充足を主張する上で、少なからず助けになる可能性があると思う。

 要点は以下の通り。

 上記判断フローのStep 2Bにおいては、クレームが「法上の例外」の限定を含むという前提で、そのような「法上の例外」の限定の他、「追加の限定」として、「有意な構成要素」(additional elements significant more than the judicial exception)を含んでいるか否かを判断する。ここで、コンピュータプログラム自体は「法上の例外」に該当する。

 その際、「追加の限定」としては、例えば、そのようなプログラムを含む媒体やシステム、そのようなプログラムによって動かされる装置、そのようなプログラムの実行の結果として生み出される結果物、それから発明全体として奏される効果等が考えられる。

 この時、クレームに含まれる「追加の限定」が「有意な構成要素」(additional elements significant more than the judicial exception)と判断されるか否かのより具体的な判断基準としては、「良く知られた手順、通常の手順、或いは慣習的な手順 (well-understood, routine, conventional activity) ではない」ものか否か、という点が検討される。つまり、クレームに記載された「追加の限定」が、「良く知られた手順、通常の手順、或いは慣習的な手順 (well-understood, routine, conventional activity) 」でなければ、クレーム発明は特許の適格性を有すると判断される。

 「良く知られた手順、通常の手順、或いは慣習的な手順 (well-understood, routine, conventional activity) ではない」と言える為の条件として、裁判所は、しばしば “Inventive Concept” という言葉を使ってきた。素直に読めば、発明としての新規性や進歩性のような概念?のようにも思える。そうすると、「追加の限定」自体に発明としての新規性や進歩性のある特徴が認められる事が、Step 2Bにおいて、肯定的な判断を得るための必要条件であるかのようにも思える。ただ、普通に考えてそれは少しおかしな話だ。そもそも、101条の要件というのは、あくまでも特許の対象(法の保護対象)としての発明が実体としてどのようなものであるかという問題に帰するもので、新規性や非自明性(進歩性)とは本質的に異なる要件である。。。はず。。。なのだから。

 実際、ソフトウェア関連発明のクレームについて101条要件が争われたDiamond v. Diehr事件 (1981) において、最高裁は、「同じ技術分野において既知の要素やそのような要素の組み合わせは『従来のものではない』或いは『ルーチンではない』追加要素となり得る (“An additional element (or combination of additional elements) that is known in the art can still be unconventional or non-routine. The question of whether a particular claimed invention is novel or obvious is "fully apart" from the question of whether it is eligible.”)」という見解を示している。

 2018年1月改訂の特許審査便覧 (MPEP) では、101条要件の判断においては、たとえ従来技術に対する新規性を欠いているような改善であっても、従来のコンピュータの機能の改善と認定され得る事 (“claims may exhibit an improvement over conventional computer functionality even if the improvement lacks novelty over the prior art.”) が明確にされている。そのような事がMPEPにおいても明確にされる至った背景として、Enfish, LLC v. Microsoft Corp.事件 (Fed. Cir. 2016) の影響も大きいと思われる。

 同事件において、裁判所は、いわゆるクレームにおける抽象概念 (abstract idea) に対する「追加事項」として101条要件を充足するという判断の決め手になった限定を含むクレームのうち、幾つかのクレームについて、101条要件は満たすが、102条要件(新規性要件)を欠くという判断を下している (MPEP 2106.05(d)(I)で引用)。

 そして今回、Berkheimer v. HP, Inc事件において、裁判所は、改めて、以下の点を明確にした。
 「(101条要件の判断に際し、) 特定の技術が『良く知られた手順、通常の手順、或いは慣習的な手順 (well-understood, routine, conventional activity) である』と事は、単に従来技術において既知であるという事」を越えるものである。例えば、単に従来技術において開示されているという事で、それが『良く知られた手順、通常の手順、或いは慣習的な手順 (well-understood, routine, conventional activity) である』事を意味する事にはならない。"[w]hether a particular technology is well-understood, routine, and conventional goes beyond what was simply known in the prior art. The mere fact that something is disclosed in a piece ofprior art, for example, does not mean it was well-understood, routine, and conventional."

 上記の点を踏まえ、MPEPの以下のセクションの内容が修正されるようです。

 MPEP § 2106.07(a) (Formulating a Rejection For Lack of Subject Matter Eligibility)
 MPEP § 2106.07(b) (Evaluating Applicant's Response)。

[参考]
Berkheimer v. HP, Inc事件の判決 (Fed. Cir. February 6, 2018) を踏まえたUSPTOのMemorandum (2018年4月19日発行) こちらです⇓
https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/memo-berkheimer-20180419.PDF

以上

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Relative Terminology -term of degree-

「クレームに記載された文言又は表現が曖昧である為に発明が不明確である」といった理由で112条(b)項違反の拒絶理由を受ける事がある。

この種の112条(b)項違反の拒絶理由には、幾つかパターンがあるが、そのうちの一つに、"relative terminology"というのがある。

クレームにおいて、"terms of degree"(程度を示す用語)は、発明を十分明確に表現することにならない場合があるというものだ。

この種の用語は、出願時において、できれば避けた方が無難な用語ではあるけれど、以下の通り、場合によっては、112条要件違反を主張する審査官に反論が可能な場合もある(ケースバイケースです)。

"essentially"とか "substantially"などは、問題になり易い用語として良く知られている。何れも「本質的に」とか、「実質的」という意味になる。これらの用語を使ったからと言って、必ず112条(b)項違反になるわけではないが、問題になる可能性は高い。要は、どの程度が「本質的」又は「実質的」なのかが、明細書を照らし合わせてみた時、当業者にとって明確であると言えれば、112条(b)項違反にはならないという事になっている (In re Marosi (Fed. Cir. 1983), Exxon Research and Eng’g Co. v. United States (Fed. Cir. 2001))。

"terms of degree"(程度を示す用語)として、112条(b)項要件が問題になった用語には、"near"(近傍)という用語もある。これも、「近傍」が「どの程度近い」ことを意味するのかが、明細書を照らし合わせてみた時、当業者にとって明確であると言えれば、112条(b)項違反にはならない、とされた判例がある(Young v. Lumenis, Inc. (Fed. Cir. 2007))。

それから、少し面白い表現として"so dimensioned as to be insertable through the space between A and B"(部材Aと部材Bの間に挿入可能な"dimension"(形状や大きさ))というのがある。実際にこの表現が問題になったケースでは、裁判所は、概ね以下のような趣旨で、上記の表現は112条(b)項要件を満たすと判じている。

「(クレームの文脈から)当業者は、クレームで表現された形状や大きさを容易に理解できるし、この表現が、当該技術分野において当該箇所に使用され得るあらゆる部品を意味するわけではなく、有限な範囲に部材(の形状や大きさ)を限定している。」(Orthokinetics, Inc. v. Safety Travel Chairs, Inc. (Fed. Cir. 1986))。

以上

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101条要件違反の拒絶理由に対する対策(ソフトウェア関連発明)について

Bilski事件(2010年)、Mayo事件(2011年)、Alice事件(2014年)といった一連の最高裁判決を経て、特にソフトウェア関連発明における101条要件(発明の適格性)についてのハードルが非常に高く感じられるようになった今日です。

米国の多くの実務家の間でもかなり大きな問題になっています。

とても難しい問題と思いますが、弊所においても、この問題に対応すべく弊職なりの経験と知識に基づき、特にソフトウェア関連発明の出願において101条要件違反の拒絶を回避、解消するための方策をまとめてみました(弊所のウェブサイトで公開致しました)。

弊職の個人的な経験や私見に基づく内容も多く、完璧なものとは全く言えませんが、この課題を考える上での資料として、多少なりともお役に立てば幸いと思います。

35U.S.C.101(発明の特許適格性)違反の解消と回避に関する考察(Nakanishi IP Associates, LLC)

101条要件違反対策として、あくまでも私見に基づくものであり、これをご参考にされ、USTPOへの対応を行った場合、その結果に対して責任を負うものではありませんので、予めご了承ください。

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米国特許法101条 (発明としての適格性) に関するUSPTOの判断基準 (適格性が認められない具体例4)

米国特許実務及び米国出願用特許翻訳に関するセミナーを開催します(9月10日 名古屋)

演題:
強い米国特許を取得するために-米国における権利化実務の重要ポイント-
詳しくは弊所のウェブサイトをご覧ください。⇒Nakanishi IP Associates, LLC
どうぞよろしくお願い致します。


 前回に続き、コンピュータプログラムに関するクレーム発明が101条要件を充足するか否かの判断プロセス (Step 1, 2A, 2B) を説明する為にUSPTOの審査基準に示された具体例のうち、適格性の認められない (101条要件を満たさない) 4番目の具体例を紹介する。これが、クレーム発明が101条要件を充足するか否かを判断するにあたり、USPTOが示した最後の具体例である。

 原文(引用元)はこちら(18ページ目です)⇒Abstract Idea Examples (January 2015)

 本例もまた、特許侵害訴訟において、クレームが101条要件を満たしているか否かが実際に裁判所で争われた事例 (Ultramercial v. Hulu and WildTangent (Fed. Cir. 2014)) で問題となったクレームである。上記事件で問題になったクレームについて、裁判所は、101条要件を満たさないと判断している。

 本件で問題となったクレーム発明は、著作物としてのデジタルメディア(ビデオやオーディオ等)のプライバシーに関する問題であって、特に現金やクレジットカードを利用する事ができない状況にある人の問題(不便)を解決することを目的としている。詳しくは、この発明は、テレコミュニケーション・ネットワークを介し、著作権のような知的財産権によって保護されている製品を配信する行う為のものである。より詳しくは、製品としての著作物に購入(希望)者がアクセスすると、資金提供者からのメッセージ(広告)を受け取るか、資金提供者とやり取りができるようにする。その結果、資金提供者が(当該製品の)知的財産権の所有者に代金を支払い、当該製品の購入(希望)者は、直接支払いをすることなく、当該製品を取得する事ができる。クレームには、発明の構成要素として、上記のような処理を行うための詳細な手順が記載されている。

問題となったクレームのうち代表的なもの:
1. A method for distribution of products over the Internet via a facilitator, said method comprising the steps of:
  a first step of receiving, from a content provider, media products that are covered by intellectual property rights protection and are available for purchase, wherein each said media product being comprised of at least one of text data, music data, and video data;
  a second step of selecting a sponsor message to be associated with the media product, said sponsor message being selected from a plurality of sponsor messages, said second step including accessing an activity log to verify that the total number of times which the sponsor message has been previously presented is less than the number of transaction cycles contracted by the sponsor of the sponsor message;
  a third step of providing the media product for sale at an Internet website;
  a fourth step of restricting general public access to said media product;
  a fifth step of offering to a consumer access to the media product without charge to the consumer on the precondition that the consumer views the sponsor message;
  a sixth step of receiving from the consumer a request to view the sponsor message, wherein the consumer submits said request in response to being offered access to the media product;
  a seventh step of, in response to receiving the request from the consumer, facilitating the display of a sponsor message to the consumer;
  an eighth step of, if the sponsor message is not an interactive message, allowing said consumer access to said media product after said step of facilitating the display of said sponsor message;
  a ninth step of, if the sponsor message is an interactive message, presenting at least one query to the consumer and allowing said consumer access to said media product after receiving a response to said at least one query;
  a tenth step of recording the transaction event to the activity log, said tenth step including updating the total number of times the sponsor message has been presented; and
  an eleventh step of receiving payment from the sponsor of the sponsor message displayed.

Step 1:
 上記クレームは、プロセス、特に、インターネットを通じてメディアや広告を配信するための一連の工程から構成されている。従って、プロセス (process) としてのカテゴリーに属するための十分条件を満たす。⇒Step 1の判断は“YES”

Step 2A:
 それでは、上記クレームは、非法定の(i) 自然法則、(ii) 自然現象、(iii) 抽象概念の何れかを対象とする法的例外 (judicial exception) であるか?
 当該クレームには、著作物としてメディアへのアクセスと引き換えに、広告を表示する工程が記載されている。これは、「広告に、為替や通貨として役割を担わせる」という概念に相当し、過去、裁判所が抽象概念と認定した「商業的な実践に関連する人的活動(ビルスキ事件で問題になったクレームの『ヘッジ(hedging)』)」に似ている。クレームに含まれる他の限定事項は、上記「広告に、為替や通貨として役割を担わせる」という概念の下位概念に過ぎない。すなわち、著作物としてのメディアを受け取り、広告を選択し、選択された広告の閲覧と当該メディアの購入を提案し、当該広告を表示し、当該広告を閲覧した消費者が当該メディアにアクセスできるようにし、広告主である資金提供者から支払いを受け取るといった工程であり、これらの工程(限定事項)もまた、抽象的な概念(人的活動)に過ぎない。従って、クレームに記載された発明は、抽象的な概念 (abstract idea)、すなわち法的例外 (judicial exception) に該当する。⇒ Step 2Aの判断は“YES”

Step 2B
 では、クレームに「追加の限定事項 (additional limitation)」が記載されており、その追加の構成要素が、クレームを「全体として」見た場合に、「広告に、為替や通貨として役割を担わせる」という概念を「有意に越えるもの」(“significantly more”)に変えていると言えるか?問題となったクレームには、活動記録にアクセスしその記録を更新し、消費者からの広告閲覧の要求を命じ、一般公開を制限し、情報伝達媒体としてインターネットを使う、といった追加の構成要素が含まれる。しかし、これらの工程は、何れも定型的で、主な工程に付随する定型的な手順に過ぎず、重要な構成要素ではない。そうすると、クレームの内容は、個々の工程を見ても、全体として見ても、「為替や通貨に相当するものとして広告を使う」という抽象的な概念を、「有意に越えるもの」(“significantly more”)に変えるものが付加されているとは言えない。⇒ Step 2Bの判断は“NO”

 従って、同クレームに法の保護対象としての発明の適格性は認められない。

私見:
 これまで、コンピュータプログラムに関するクレーム発明が101条要件を充足するか否かの判断プロセス (Step 1, 2A, 2B) を説明する為にUSPTOの審査基準に示された具体例のうち、適格性の認められる (101条要件を満たす) 4つの具体例と、適格性の認められない (101条要件を満たさない) 4つの具体例、計8つの具体例を紹介した。

 これらの具体例を検討してみても、101条要件を満たすか否かの判断の決め手がこれだと、一言で言い切るのは難しいように思う。

 ただ、少なくとも、一般的なコンピュータによって実行されるプログラムについては、記録媒体、プロセス、システム等、どのようなクレーム形式をとっても、当該プログラムの実行により、「ある程度の特殊性」の認められるアウトプット(信号やデータ、例えばウイルスを除去されたデータとか、同じハードウェアを使ってもそれを使うだけで画質に改善が見られる特殊な画像データとか)が認められなければ、101条要件を充足すると認めてもらえない、という事は言えそうだ。

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プロフィール

中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)

Author:中西康一郎 (Koichiro Nakanishi)
日本の特許事務所、企業知財部勤務の経験を経た後に渡米し、米国の特許法律事務所に8年勤務後、米国テキサス州ヒューストンにおいて、日本企業の米国特許出願代理を専門とする代理人事務所(Nakanishi IP Associates, LLC)を開設しました。2016年5月、事務所を米国カリフォルニア州サクラメントに移転しました。

現在、Nakanishi IP Assocites, LLC 代表

資格:
日本弁理士
米国パテントエージェント

事務所名:Nakanishi IP Associates, LLC
所在地:
6929 Sunrise Blvd. Suite 102D
Citrus Heights, California 95610, USA

Website:
Nakanishi IP Associates, LLC

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